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残業代の正しい計算方法

はじめに

今回は、残業代の正しい計算方法について解説させていただきます。何となく、基本給に2割5分の割増をつけて払っている事業主様、いませんか?実は、この部分はプロの開業社労士でも明確な説明ができない人が多いのです。私もその一人でしたが、しっかりと整理しましたので、今日は、その成果をご報告申しあげます。では、よろしくお願いいたします。

参考資料・URLのご案内

アテラ 残業代の基礎になる時給の計算方法~基本給との違い~(弁護士執筆)

https://www.legal-security.jp/column/369

カオナビ 残業手当とは? 残業、他手当との違い、計算方法や計算式、請求方法や注意点、問題について

https://www.kaonavi.jp/dictionary/zangyo-teate/

残業代は残業代=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率

という式で計算します。

残業代は

残業代=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率

という式で計算します。

この式からも明らかなとおり、残業代を計算するには、1時間あたりの「基礎賃金(きそちんぎん)」を計算しておく必要があります。

実は、労働基準法での基礎賃金は、いわゆる基本給と一致するとは限りません。つまり、会社からは時給いくらだと言われていても、残業代を計算する際の1時間あたりの基礎賃金は、それより高くなる可能性があります。

そこで今回は、この1時間あたりの基礎賃金の計算方法について、詳しく解説します。

1. 基礎賃金に含まれる給与の範囲

残業代計算に必要な1時間あたりの基礎賃金を求めるには、基礎賃金には何が含まれて、何が含まれないのかのルールを理解する必要があります。このルールに従って、基礎賃金に含まれる全ての賃金(基本給・手当・ボーナス)を合計すれば、基礎賃金を求めることができます。

1-1. 残業代計算のための基礎賃金は基本給とは異なる

残業代を計算するための基礎賃金は、普段もらっている給料の額を基準として、労働基準法に従って算出されます。基本給がそのまま基礎賃金になるわけではありません。

1-2. 基礎賃金計算の基本的な考え方

基礎賃金は、既払いの残業手当・残業代を除いた普段の給料から、労働基準法で定められた一部の手当やボーナス等の金額を差し引いて計算します。差し引かれる手当・ボーナス等は以下のとおりです。

1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)

通勤手当

家族手当

住宅手当

別居手当

子女教育手当

臨時に支払われた賃金

反対に、手当の名目で支給されている給料のうち、地域手当、役職手当、資格手当といったような手当は、基礎賃金に含まれます。

<具体例>

1か月の給料が25万5000円で、その内訳は、基本給が21万円、役職手当が3万円、家族手当が1万円、通勤手当が5000円であるとします。

この場合、基礎賃金は、給料の合計金額から、家族手当と通勤手当を差し引いて計算します(役職手当は基礎賃金に含まれるため差し引きません。)。

具体的には、

25万5000円-1万円-5000円=24万円

が1か月あたりの基礎賃金になります。

1-3. 残業手当・残業代等の取り扱い

1-3-1. 通常の残業手当・残業代の取り扱い

基礎賃金は、残業でも深夜でもない普通の労働時間中に行われた仕事に対していくらの賃金が支払われているのかという観点から計算されます。

したがって、実際の残業時間に応じて事後的に支払われた通常の残業手当・残業代は、普通の労働時間中に行われた仕事に対する賃金ではないため、基礎賃金に含めません。

1-3-2. 固定残業代の取り扱い

あらかじめ固定残業代(定額の残業代)が支払われていても、給料のうち、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外労働・深夜労働に対する残業代に当たる部分とを判別できない場合(つまり、「給料のうち何円分が時間外労働に対する残業代なのか」が明確に決まっていない場合)には、その固定残業代の支払いは法律上は残業代として扱われず、残業時間に応じた残業代全額を請求することができます。したがって、このような場合には、固定残業代は基礎賃金に含まれることになります。

他方で、給料のうち、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外労働・深夜労働に対する残業代に当たる部分とが判別でき、固定残業代の支払いが法律上も残業代として扱われる場合には、通常の残業手当・残業代と同様に、固定残業代は基礎賃金に含めずに残業代を計算します。

例えば、固定残業代について、単に「月給25万円(残業代を含む)」「月給25万円(月間180時間までの残業手当を含む)」といった程度にしか定められていない場合は、この固定残業代の支払いは法律上は残業代としては扱われず、固定残業代についても基礎賃金に含まれることになります。

1-3-3. 深夜勤務手当・休日勤務手当の取り扱い

深夜勤務手当や休日勤務手当が会社から支払われている場合、これらの手当も通常の残業手当・残業代や固定残業代の場合と同じように考えて、基礎賃金に含まれるかどうかが決まります。

1-4. ボーナスの取り扱い

ボーナスは、一般的には「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当して、基礎賃金から除外されることが多いと考えられます。

しかし、ボーナスであれば必ず基礎賃金から除外されるとは限りません。

例えば、年俸制の場合にボーナスの支給額が「年俸480万円の16分の2」といったようにあらかじめ確定しているような場合には、このボーナスは基礎賃金から差し引かれません。

1-5. 通勤手当等の取り扱い

通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当も、基礎賃金から差し引かれることは既に説明しました。

ただし、通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当という名前が付いていても、実態を伴っていなければ、基礎賃金からは差し引かれません。

1-5-1. 通勤手当

通勤手当は、通勤距離や通勤に必要な費用に応じて算定される手当のことをいいます。

したがって、通勤手当という名前で支給されていても、一定額までは距離にかかわらず一律に通勤手当が支給されるような場合には、その一定額の部分については、基礎賃金からは差し引かれません。

1-5-2. 家族手当

家族手当は、扶養家族数を基礎・基準として算出した手当のことをいいます。

したがって、家族手当という名前で支給されていても、扶養家族数に関係なく一律に支給される手当や一家を扶養するものに対して基本給に応じて支払われる手当は、基礎賃金から差し引かれません。

また、家族手当との均衡で、独身者に対しても一定額の手当が支払われているような場合には、その一定額に相当する部分については、基礎賃金から差し引かれません。

他方、「家族手当」という名前でなくても、扶養家族数を基礎・基準として算出されていれば、基礎賃金から差し引かれます。

1-5-3. 住宅手当

住宅手当は、住宅に要する費用に応じて算定される手当のことをいいます。

したがって、住宅手当という名前で支給されていても、住宅に要する費用以外の費用に応じて算定される費用や、住宅に要する費用にかかわらず一律に定額で支給される手当は、基礎賃金から差し引かれません。

例えば、賃貸住宅居住者には家賃の一定割合を、持家居住者にはローン月額の一定割合を支給しているような場合の住宅手当は、基礎賃金から差し引かれます。他方、例えば、賃貸住宅居住者には定額で2万円、持家居住者には定額で1万円を一律支給しているといったような場合の住宅手当は、基礎賃金から差し引かれません。

1-6. 臨時に支払われた賃金の取り扱い

臨時に支払われた賃金も、基礎賃金から差し引かれます。

臨時に支払われた賃金とは、傷病手当、加療見舞金や結婚手当のように、臨時的、突発的事由に基づいて支払われた賃金や、支給事由の発生が不確定かつ非常にまれである賃金のことをいいます。もちろん、傷病手当、加療見舞金や結婚手当といった名前でも、実態を伴っていなければ、基礎賃金からは差し引かれません。

2. 1時間あたりの基礎賃金(時給)の計算方法

これまで説明してきた要領で、基礎賃金に含まれる全ての賃金(基本給・手当・ボーナス)を合計すれば、基礎賃金を求めることができます。次は、これを1時間あたりの基礎賃金(いわば時給)に換算します。

2-1. 月給制の場合

まず、典型的な働き方である月給制の場合にどのように計算するかを説明します。

月給制の場合、その月に合計何時間働くかという月あたりの所定労働時間(所定労働時間)が就業規則などで決まっているはずです。

月給制の場合は、月の基礎賃金の額を、この所定労働時間で割って、1時間あたりの基礎賃金の金額を求めます。

ただし、月によって日数や土日の数が違いますから、1か月間の所定労働時間は毎月違うのが通常です。この場合、1か月間の所定労働時間を、1年間の平均から計算します。

<具体例>

月給24万6000円、就業規則上は1日8時間労働で土日祝日、年始(1月3日まで)、年末(12月29日以降)が休みの場合を考えてみます。

2021日年の1年間の勤務日数は246日(休みが119日)で、1年間の所定労働時間(就業規則上の労働時間)は、

8時間×246日=1968時間

となります。

したがって、1か月の所定労働時間は、

1968時間÷12か月=164時間

となり、1時間あたりの基礎賃金は、

24万6000円÷164時間=1500円

となります。この場合、ある月に法定外の時間外労働が20時間あったとすれば、その月の残業代は、

1500円×20時間×1.25=3万7500円

となります。

2-2. 時給制の場合

時給制の場合には、残業代がもらえないという誤解がありますが、実際はそうではありません。時給制の場合でも、残業すれば残業代はもらえます。

時給制の場合は、計算された基礎賃金が、そのまま1時間あたりの基礎賃金になります。

<具体例>

基本給が時給1000円、役職手当が1時間あたり100円付いているような場合、基礎賃金は1時間あたり1100円になり、この金額をそのまま残業代計算に使います。

2-3. 日給制の場合

日給制の場合も、残業すれば残業代はもらえます。

日給制の場合は、1日の基礎賃金の額を、1日あたりの所定労働時間で割って、1時間あたりの基礎賃金の金額を計算します。

<具体例>

1日あたり5時間の仕事で、基礎賃金が1日あたり8000円の場合、1日あたりの所定労働時間は5時間のため、

8000円÷5時間=1600円

が1時間あたりの基礎賃金となります。

なお、所定労働時間が日によって異なるような場合には、1週間の平均から1日あたりの所定労働時間を計算し、これを利用して1時間あたりの基礎賃金の金額を計算します。

2-4. 週給制の場合

週給制の場合は、1週間の基礎賃金の額を、1週間あたりの所定労働時間で割って、1時間あたりの基礎賃金の金額を計算します。

なお、所定労働時間が週によって異なるような場合には、4週間の平均から1週間あたりの所定労働時間を計算し、これを利用して1時間あたりの基礎賃金の金額を計算します。

2-5. 年俸制の場合

年俸制であっても、残業すれば残業代はもらえます。年俸制の場合には残業代がもらえないというのは、大きな誤解です。年俸制の場合は、1年間の基礎賃金の額を、1年あたりの所定労働時間で割って、1時間あたりの基礎賃金の金額を計算します。

<具体例>

年俸338万8000円、就業規則上は1日8時間労働で1年間の勤務日数が242日の場合、1年間の所定労働時間は、

8時間×242日=1936時間

となります。

したがって、1時間あたりの基礎賃金は、

338万8000円÷1936時間=1750円

となります。

2-6. 歩合給制の場合

「契約成立1件につき何円支給する」といったように、一定の成果に応じて支払われる賃金のことを「歩合給(ぶあいきゅう)」といいます。

2-6-1. 歩合給制の場合の1時間あたりの基礎賃金

歩合給制の場合には、基礎賃金の額をその期間の総労働時間で割って、1時間あたりの基礎賃金の金額を計算します。所定労働時間ではなく総労働時間であるというのがポイントです。

<具体例>

歩合給が27万円となった月に、総労働時間が180時間だった場合、所定労働時間が何時間だったかにかかわらず、1時間あたりの基礎賃金は、

27万円÷180時間=1500円

となります。

なぜ固定給と違った扱いになっているのかというと、歩合給には、割増される前の賃金が含まれていると考えられているためです。

2-6-2. 歩合給制の場合の残業代の計

また、残業代も、割増された部分だけしか発生しません。これも、歩合給には、割増される前の賃金が含まれていると考えられているためです。

<具体例>

歩合給が27万円となった月に、総労働時間が180時間で、そのうち法定外残業が12時間だった場合、1時間あたりの基礎賃金は、

27万円÷180時間=1500円

となります。

法定外残業の割増率は1.25ですが、歩合給27万円には割増される前の賃金(1に当たる賃金)が含まれていると考えられているため、残業代は、

1500円×12時間×0.25=4500円

となります。

2-6-3. 固定給と歩合給の両方が支給されている場合

固定給と歩合給の両方が支給されている場合には、固定給部分と歩合給部分を分けて計算し、それらを合計します。

3. まとめ

残業代の基礎になる時給、すなわち1時間あたりの基礎賃金は、以上のようにして計算します。いわゆる基本給と金額が一致するとは限らないということは、ぜひ押さえておいてください。

参考資料 労働基準法 第32条 労働時間

(労働時間)

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

参考資料 労働基準法第35条 休日

(休日)

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

参考資料 労働基準法 第36条 時間外及び休日の労働

(時間外及び休日の労働)

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

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