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日本に定年制廃止を提言 OECD、働き手の確保促す
日本に定年制廃止を提言 OECD、働き手の確保促す
OECDは働き手確保へ定年廃止などの提言をまとめた
経済協力開発機構(OECD)は11日、2年に1度の対日経済審査の報告書を公表した。人口が減る日本で働き手を確保するための改革案を提言した。定年の廃止や就労控えを招く税制の見直しで、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えた。成長維持に向け、現実を直視した対応が求められる。
日本の就業者数は今後、急速に細る。OECDは23年に外国人も含めて6600万人程度と推計した。出生率が足元の水準に近い1.3が続けば、2100年に3200万人に半減する。
OECDは高齢者や女性、外国人の就労底上げなどの改革案を実現すれば出生率が1.3でも2100年に4100万人の働き手を確保できると見込む。出生率を政府が目標とする1.8まで改善できれば5200万人超を維持できるという。
高齢者向けの具体策では、定年の廃止や同一労働・同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢の引き上げを提示した。
OECDに加盟する38カ国のうち、日本と韓国だけが60歳での定年を企業に容認している。米国や欧州の一部は定年を年齢差別として認めていない。
日本で定年制が定着した背景には、年功序列や終身雇用を前提とするメンバーシップ型雇用がある。企業は働き手を囲い込むのと引き換えに暗黙の長期雇用を約束することで、一定年齢での定年で世代交代を迫った。
職務内容で給与が決まる「ジョブ型雇用」は導入企業が増える傾向にある。岸田文雄首相は23年10月の新しい資本主義実現会議で「ジョブ型雇用の導入などにより、定年制度を廃止した企業も出てきている」と述べた。
OECDは年功序列からの脱却などを指摘するが、大企業を中心にメンバーシップ型の雇用は根強い。マティアス・コーマン事務総長は11日の都内での記者会見で「働き続ける意欲が定年制で失われている」と強調した。
政府の新しい資本主義実現会議では、高齢者がスキルに見合った待遇を受けられることも念頭に、ジョブ型導入の事例集の作成を急いでいる。定年制の抜本的な見直しについては、政府の公の議論の俎上(そじょう)には載っていない。
厚生労働省の22年の調査によると、日本企業の94%が定年を設けている。うち7割が60歳定年だ。政府は65歳までの雇用確保を義務づけ、21年度からは70歳までの就業機会の提供を努力義務にした。
パーソル総合研究所の21年の調査では70歳以上まで働き続けたいと希望する60代従業員は4割以上おり、就労意欲がある。働き方が変わる中で、定年の仕組みをどうしていくかの議論が重要な局面になりつつある。
報告書は、公的年金を支給する年齢水準についても平均寿命の延びに追いついていないと主張した。現在は65歳となっている標準的な受給開始年齢の引き上げを求めた。同一労働・同一賃金の徹底で、正規と非正規の労働者の待遇格差をなくすことにも言及した。
女性の就労促進では年収が一定額を超えると手取りが減る「年収の壁」をなくすよう提起した。
女性の働き手に占める非正規の割合は5割と、男性の2割に比べて高い。第3号被保険者や社会保険料控除など、女性の就業調整につながる税制などの抜本的な見直し案を示した。
外国人労働者の誘致では差別の防止や、高い技能をもつ外国人労働者の配偶者が日本で就労しやすくすることを提案した。
働き手の減少は日本の経済力の衰えに直結し、社会保障の維持もいっそう難しくなる。政府や企業は問題を真摯に受け止めて早急に対応する必要がある。
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