職場の常識、違法リスクも　

規律強化やハラスメント対策で課題　内部通報制度、浸透遅れ

 新年度の始まりから約1カ月がたち、職場の雰囲気も落ち着いてきた。だが「当たり前」にみえる職場の慣習や同僚の振る舞いにも、法令に抵触する問題が潜んでいることがある。特にハラスメントや社内規律に関する社会常識は徐々に厳しくなっている。上司や先輩こそ意識を高く持ち、働きやすい職場づくりに努めたい。

 若手Aさん「課長の経費の私的流用、目に余りませんか。部長も見て見ぬふりだし内部通報窓口に知らせましょう」

　先輩Bさん「弊社にそんな窓口ないよ。大企業だけの制度じゃないの？」

2022年6月の公益通報者保護法の改正で、企業は内部通報を受けて調査するなどの体制整備などが求められるようになった。従業員が300人超の企業は内部通報窓口の設置などが義務となり、それ以外の企業も努力義務とされた。

 ただ制度の浸透は途上だ。消費者庁が24年2月にまとめた「内部通報制度に関する意識調査」によると、全国の1万人の就労者のうち「勤務先に内部通報窓口が設置されていることを知っている」としたのは約3割。7割は「設置されていないことを知っている」か「設置されているかわからない」だった。

従業員数の少ない企業ほど制度整備の遅れが目立つ。窓口整備の法的義務がある300人超の企業でも「設置されていないことを知っている」との回答があった。301人以上1000人以下の企業の場合、約15%に上った。

 企業の内部通報制度に詳しい水嶋一途弁護士は「社員数が少ない企業では『問題があればすぐわかるから内部通報制度の必要性を感じない』という経営者も多い」と話す。社内規定を整備する手間や、通報先として弁護士に依頼する際の費用などハードルの高さも指摘される。

とはいえ内部通報は不正の予防や初期の対応に有効だ。浅見隆行弁護士は「中小企業1社では難しくても、業界団体などの共通窓口を設けるなど、工夫の余地はある」と呼びかける。

 先輩のAさん「さっきのハラスメント研修、くだらなかったなあ。厳しいことばっかり言われたら誰とも何も話せないよ」

　後輩のBさん「まずいですよ。研修で、研修をバカにするのもハラスメントになるリスクがあるって指摘されていましたよ」

ハラスメント対策の重要度も依然として高い。

大阪市の水族館に勤務する男性管理職のセクハラ発言を巡り、運営会社の懲戒処分の妥当性などが争われた訴訟で、15年の最高裁判決が注目された。セクハラ研修を受けた男性管理職の「あんなん言ってたら女の子としゃべられへん」などの発言を、判決はセクハラの一環と認定した。

 労務問題に詳しい青龍美和子弁護士は「（他の事例でも）研修を軽視する発言だけで違法とされる可能性は低いが、既にセクハラ行為をしている加害者が研修をバカにする発言をし被害者がプレッシャーを感じれば、複合的な要因の一つとしてセクハラになりうる」と話す。

ハラスメント研修を巡っては、受講する従業員にいかに「自分のこと」ととらえてもらうかという実効性が課題となる。青龍氏は「実例をもとに数人のチームでグループワークをするなど、受け身にさせない研修が望ましい」と話す。

 知識のアップデートも欠かせない。たとえばセクハラなら「体に触る」「性的な発言をする」といった典型的な行為に加え、「女には仕事を任せられない」「男のくせに根性がない」といった性別による差別発言にも注意が必要だ。

もし自分がハラスメントの被害に遭ったらどうすべきか。青龍氏は「まずは相手がどんな言動をしたのか日時を含めた記録を残すことが大事だ」と話す。職場の窓口などに相談する際にも、被害状況が伝わりやすくなるという。 

２０２４年５月６日（月）録画　　

職場の常識、違法リスクも　

規律強化やハラスメント対策で課題　９分３９秒

HP： http://www.inokyuu1125.jp/17149541033970

ユーチューブ動画：https://youtu.be/S-uF6fQFpEE