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2023年11月5日(月)日本経済新聞朝刊 ダイバーシティより
育児しにくい企業、パパ去る 仕事と両立求め転職
育児しにくい企業、パパ去る 仕事と両立求め転職
残業や「ダディートラック」回避
育児を理由に働き方を変える男性が増えている。夫婦で平等に家事や育児を担う考えが若い世代を中心に広がっていることが要因で、長時間労働が常態化し柔軟な働き方ができない企業からは転職・退職を選ぶケースもある。男性の人材流出を防ごうと、業務や風土の見直しにより残業を抑制したり、働く親のネットワークを強化したりする会社も出てきた。
第2子誕生を契機に、残業が少ない会計事務所に転職した菊池さん
「もう無理だよ。家庭が回りません」。金融系企業で働いていた菊池優希さん(35)が転職を考えたのは妻の言葉がきっかけだ。仕事が忙しく帰宅は毎日23時半。2歳の娘と顔を合わせるのは朝だけ。共働きの妻はいわゆる一人で家事育児をこなす「ワンオペ育児」の状況だった。そんな中、妻が第2子を妊娠した。
妻の体に負担がかかる保育園の送迎は自分が担いたいと、会社に働き方を交渉したが聞き入れられなかった。「専業主婦の妻を持つ男性か、子どもを持たない人しか働いていなかった」と振り返る。周りの社員にも相談できず、残業が少ない会計事務所に転職した。
都内の商社に勤務していた20代男性も育児を理由に職を変えた。会社では残業しない育児中の女性社員が出世ルートから外れるのを多く見てきた。子どもが生まれても働き方を変えられず、深夜帰宅が続いた。
21年に在宅勤務ができて残業時間も少ないメーカーに転職を決めた。保育園の送迎や夕食準備、子どもの入浴を分担できるようになった。
若い世代の意識は変わりつつある。
国立社会保障・人口問題研究所が独身の18~34歳を対象に夫婦の理想の働き方を尋ねた調査では21年に男女とも初めて、妻が出産後も働き続ける「両立コース」が出産を機にいったん退職する「再就職コース」を逆転して最多になった。男性側の増加幅が大きく、「両立」を選んだ割合は21年、1987年の約4倍になった。
共働きをするなら家事・育児の分担は欠かせないが、日本は海外に比べて夫の家庭参画が遅れる。内閣府が23年に発表した「生活時間の国際比較」によると、欧米諸国では女性が費やす家事・育児などの無償労働時間は男性の1.5倍程度だが、日本は5.5倍だ。
現状を変えたいと思う男性は少なくない。サイボウズチームワーク総研が22年に男性社員・公務員1000人を対象に実施した調査では7割が「育児が始まったら働き方を変更したい」と回答した。その理由として「妻の負担を減らしたい」(40代男性)、「育休を終えても育児は終わったわけではない」(30代男性)との答えが目立つ。
市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」の天野妙代表は「若い世代ほど育児をしたいと考える男性が多い」と指摘する。内閣府の22年度委託調査によれば家事・育児時間を増やしたいと考える子持ちの男性の割合は40~69歳で約1割だが、20~39歳の若い世代では約3割。さらに20~39歳の男性のうち3割強が「仕事の時間を減らしたい」と回答した。
転職市場にも影響が出てきた。リクルートでエンジニア転職を支援する増谷泉希キャリアアドバイザーは「ここ数年で男性も育児を理由に転職し始めている」と話す。
増谷さんが担当した30代の男性は22年、「ダディートラック」を事由に転職した。育児中は昇進・昇格が望めないマミートラックの父親版だ。前職では残業や深夜勤務ができなければ出世できなかった。
両立を望む男性社員を支える企業も出てきた。KPMGコンサルティング(東京・千代田)は育児中の社員が悩みやノウハウを共有できる場を設ける。「ワーキングペアレンツ(働く親たちの)ネットワーク」と呼ぶ組織で社員の約1割が参加する。うち4割強は男性だ。月に1時間ほど「キャリアと子育て」「中学受験の体験談」などテーマを決め情報交換する。
2児の父である阿津坂伴さん(43)は「同じ職場だからこそ仕事の苦労も共感できるし、大変だけど仕事も育児も頑張ろうと思える」と話す。子育てが一段落した社員も参加していて「夫婦でもっと子育てを楽しんでいいんじゃないの」と言われたことに励まされた。子どもがいない社員も参加可能で、将来の育児に関する不安を払拭する場にもなっているという。
全社員の働き方を見直し、育児中の社員が気後れすることなく働けるようにした企業もある。機械部品の専門商社であるトモエシステム(神戸市)は19年以降男性育休取得率100%を誇るが、以前は残業時間が多く、育児休業への理解が社内で得にくかった。
育児中の社員だけ休みが取りやすい風土では、周囲との関係は悪化しかねない。抱える事情は社員一人ひとり違う。力を入れたのは休むときに「お互いさま」と助け合える環境づくりだ。
柳瀬秀人社長は人事や給与の制度改革と並行して「この人にしかできない仕事をなくした」と話す。業務を棚卸しし、残業も都度申請が必要にしたところ、残業時間は大幅に減少。離職率は14年の14.5%から22年は4.0%に低下し、新卒採用のエントリー数も増えたという。
男性にはどんな両立支援策が有効か。正社員の男女各1千人に厚生労働省が22年委託実施した調査からは女性とのニーズの違いが見えてきた。
育児中の男性社員が「利用している」「利用したかった(したい)」と答えた割合の合計が高かった首位はテレワーク(31.8%)。次いでフレックスタイム制度(30.0%)で、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ(27.2%)が続く。
短時間勤務制度、残業免除の順で高い女性に対して、仕事に軸足を置きつつも、合間に家事育児の時間をつくりたい男性が多いようだ。
転職サービス「リクナビNEXT」の求人数も23年、21年比で「在宅勤務可能」が約5倍、「フレックス勤務」は約3倍に増えた。働き方に配慮する企業は増えている。
(杉山恵子)
2023年11月7日(火)録画
育児しにくい企業、パパ去る 仕事と両立求め転職 17分21秒
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