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はじめに
最近、このようなご相談をいただきました。
「現在、弊社のパート社員には社会保険を付けていませんが、このままでいいのかどうか不安です。パート社員の社会保険加入についてご指導いただきたい。」
このご相談に応えるべく、いろいろ調べていくうちに、
すべては、「年金制度改正法」(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律)による影響ですことがわかりましたので、以下、その内容をご案内申し上げます。
では、よろしく、お願い申し上げます。
年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html
2022年からはじまる社会保険の適用拡大ですが、実は、従業員数500人超(501人以上)規模の企業においては、すでに2016年からスタートしています。それが、2020年5月29日に成立した「年金制度改正法」により、パートやアルバイトでも要件を満たす場合には、社会保険の被保険者となるよう、適用が拡大されることになったのです。
年金制度改正法の概要
年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要
改正の趣旨 (令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布)
より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者
に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、確定拠出年金の加入可能要件の見直し等の措置を講ずる。
改正の概要
1.被用者保険の適用拡大 【厚生年金保険法、健康保険法、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24年改正法)、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法】
① 短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げる(現行500人超→100人超→50人超)。
② 5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加する。
③ 厚生年金・健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間労働者に対して、公務員共済の短期給付を適用する。
2.在職中の年金受給の在り方の見直し 【厚生年金保険法】
① 高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額を毎年定時に改定することとする。
② 60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲を拡大する(支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から47万円(令和2年度額)に引き上げる。)。
3.受給開始時期の選択肢の拡大 【国民年金法、厚生年金保険法等】
現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60歳から75歳の間に拡大する。
4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等 【確定拠出年金法、確定給付企業年金法、独立行政法人農業者年金基金法等】
① 確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げる(※)とともに、受給開始時期等の選択肢を拡大する。
※ 企業型DC:厚生年金被保険者のうち65歳未満→70歳未満 個人型DC (iDeCo):公的年金の被保険者のうち60歳未満→65歳未満
② 確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大(100人以下→300人以下)、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和など、制度面・手続面の改善を図る。
5.その他 【国民年金法、厚生年金保険法、年金生活者支援給付金の支給に関する法律、児童扶養手当法等】
① 国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え
② 未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加
③ 短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(具体の年数は政令で規定)
④ 年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し
⑤ 児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直し 等
企業の従業員規模によって、適用の開始時期が異なります。
すでにスタート済み
2016年10月〜従業員数500人超(501人以上)規模
2017年4月〜従業員数500人以下の企業(労使合意により、適用拡大が可能)
今後スタート
2022年10月〜従業員数100人超(101人以上)規模
2024年10月〜従業員数 50人(51人以上)超規模
従業員の要件によって、適用に該当するか判断される
従業員の要件によって、社会保険の被保険者に該当するか判断されます。従来の従業員要件に加え、以下の4つの要件をすべて満たす従業員(短時間労働者)は、被保険者になります。
【従来の従業員要件】
①正規従業員/フルタイム従業員
②週の所定労働時間数および月の所定労働日数が、正規従業員の4分の3以上であるパート・アルバイト等
【新たに広がった従業員要件】
正規従業員の所定労働時間および所定労働日数が4分の3未満であっても、以下の4つの要件をすべて満たす従業員(短時間労働者)は、被保険者になります。
①週の所定労働時間が20時間以上あること
②雇用期間が2か月超見込まれること
③賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること
④学生でないこと
①週の所定労働時間が20時間以上あること
週の所定労働時間は、原則、契約上の労働時間が20時間以上あることで判断します。したがって、残業など臨時の労働時間は含みません。ただ、週の所定労働時間が20時間未満であっても、実労働時間が2か月連続して週20時間以上となり、引き続き20時間以上見込まれる場合には、3か月目から社会保険が適用されるなど、実態の労働時間が重視されます。
②雇用期間が2か月超見込まれること
雇用期間が2か月超見込まれるかどうかで判断します。ただし、雇用契約期間が2か月以内であっても、実態が2か月を超えて使用される見込みがある場合は、雇用期間の始めから遡及して適用対象となります。たとえば、雇用期間が2か月以内でも、以下のような場合は、遡及して適用を受けます。
・就業規則、雇用契約書等で、「更新ありの旨」「更新される場合がある旨」が明示されている
・同じ職場で、同様の雇用契約で雇用されている従業員が、更新等で契約期間を超えて雇用された実績がある
③賃金月額が8.8万円以上であること
賃金月額が8.8万円以上であることが必要です。時間外労働手当、休日・深夜手当 、賞与や業績給、慶弔見舞金など臨時に支払われる賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは、含まれません。
8.8万円×12か月=106万円
④学生でないこと
学生は、社会保険の適用対象外となります。ただし、卒業前に就職したり、卒業後も引き続き同じ会社に雇用される場合などは適用対象となります。
法改正後は「雇用期間1年以上」要件が撤廃される
社会保険適用の要件が拡大されるポイントとして、大きな影響があるのが「雇用期間が1年以上見込まれる」要件の撤廃ではないでしょうか。現段階では、従業員数500人超(501人以上)規模企業の短時間労働者への保険適用に際しては、「雇用期間1年以上の見込」とされていますが、今回の法改正により撤廃されます。フルタイムなどの従業員と同様、「雇用期間2か月超の見込」が要件となります。
従業員数100人超(101人以上)、50人超(51人以上)カウントの方法とタイミング
段階的に従業員規模の要件が拡大されていきますが、ここで注意したいのが、従業員数のカウントの方法と、カウントのタイミングです。
従業員数のカウントの方法
一般的に「従業員数」というと、その企業に雇用される正規従業員をはじめ、パート・アルバイトなどすべての労働者をカウントします。しかしながら、社会保険の適用要件を判断する従業員数をカウントする場合には、その会社の常時使用する労働者数ではなく「社会保険の被保険者数」で判断します。社会保険の適用対象にならない短時間労働者はカウントされません。
また、事業場ごとにカウントするのではなく、同一の法人番号である法人ごとの被保険者数で判断することになります。
従業員数の判断のタイミング
従業員数の変動が多い会社などは、どの時点での従業員数をカウントすればよいのか、悩むところです。月ごとに従業員数の増減がある場合については、「直近12か月のうち6か月で基準を上回った段階」で適用対象となります。ここで注意したいのは、適用対象となった後に、従業員数が適用従業員規模を下回っても、原則として、引き続き適用されるということです。
社会保険の適用拡大が与える従業員への影響は?
社会保険の適用拡大は、従業員にどのような影響を与えるでしょうか。そもそも、社会保険適用拡大の背景には、多様な働き方が進む中でも、すべての世代が安心して働き、老後の安心を確保するためにあります。働き方の形態にかかわらず充実した社会保障の仕組みを強化することを目的としています。
さらに、今後の人口減少社会に備え、夫の扶養に入っている主婦層などの就業促進も目的にあります。社会保険の適用拡大により、扶養内で働くパート・アルバイト従業員の労働にも大きく影響が出てくるでしょう。
社会保険加入を希望する
パート・アルバイト従業員のメリット
①厚生年金保険に加入することで、報酬比例の厚生年金として、将来の年金受給額が増える
②病気やケガの後遺症で生活や仕事などが制限されるようになった場合、障害厚生年金が給付される
③万が一、亡くなった場合は、遺族に遺族厚生年金が支給される
④健康保険では傷病手当金や出産手当金の受給が可能になる
⑤保険料を会社と自身で折半になるので、現在、国民年金や国民健康保険に加入している一部の人は、保険料が安くなることがある
130万円の壁、106万円の壁
夫の扶養などに入っているパート・アルバイトの場合、社会保険上の扶養は、年収130万円以内とされています。今回の改正によって、会社が適用拡大の基準に該当する場合は、年収106万以下が扶養の範囲となります。
社会保険に加入することになれば、「社会保険料を支払うと手取りが減るといった心配をされる従業員もいます。とはいえ、社会保険料の負担が多くなると言っても、扶養範囲の上限を超えて働くことが可能であれば、収入が増えるため、デメリットにはならないでしょう。
社会保険の適用拡大が与える企業への影響は?
社会保険適用拡大により、企業にどのような影響を及ぼすのでしょうか?一つは社会保険料の企業負担の増加です。また、企業の採用や雇用のあり方、労働時間の見直しも含めて、労務管理に関する負担も増加するかもしれません。
社会保険料の企業負担の増加と雇用への影響
今回の改正では、2022年に100人超(101人以上)規模の企業が適用対象になると、新たに被保険者となる人は45万人、2024年の50人超(51人以上)規模の企業が対象となった場合には、新たに65万人が対象となるとされています。これらの社会保険料は、いずれも企業が半分を負担することになり、コスト増がのしかかります。
厚労省の試算によれば、社会保険の適用拡大により、短時間労働者が社会保険に加入した場合、1人当たり約24.5万円/年(40〜65歳の者の場合、+約1.5万円)増加すると言われています。
しかしながら、今回の対象の短時間労働者は、飲食業や小売業などパートアルバイトの多い業種に多いとみられていますが、新型コロナウイルスの影響で、業績に大きな打撃を受けている企業が多いのが現状です。正直なところ、パート・アルバイト従業員の保険料を負担しきれない、といった企業もあるでしょう。
さらに、今後は採用や雇用にも大きく影響してくるのが予想されます。企業としては、これまでの労働条件のままで雇用を維持させるのか、または労働時間を変更するなどして契約を巻き直すのかなど、長期的な視点で検討する必要が出てくるでしょう。今回の改正が、それぞれの短時間労働者の雇い入れそのもの、また労働条件を再考するタイミングになるかもしれません。
今後の企業における対策は?
2022年の社会保険の適用範囲が拡大を前に、中小企業はどのような対策を講じる必要があるでしょうか? まだ先の話のようではありますが、影響度を考えれば、早くに対策に取り掛かることをおすすめします。直前になって慌てないよう、経営の効率化、生産性の向上などを行なっていくことはもちろんですが、今から備えていくべきことは何か、考えていきます。
①会社の方針を決定する
社会保険料の負担は企業にとって非常に大きいものです。適用拡大後の社会保険料負担を意識した労働時間および労働日数の設定を含め、今後、従業員をどのように活用していくか方針を検討していく必要があります。
社会保険料の企業負担というコスト増を避けるため、単純に週の所定労働時間を20時間未満の短時間の従業員に切り替える選択を思い浮かべるかもしれません。とはいえ、とくにパート・アルバイトの従業員が主力戦力として運営されている小売業・飲食業などは、短い労働時間のパート・アルバイト従業員をやりくりしてシフトを組んで働いてもらうのには、採用面やシフトなどの労務管理面などを考えても、現実的ではありませんし、限界があるでしょう。例えば、1人でやる仕事を、社会保険の適用に該当しない従業員でやりくりするには、2人や3人でやらなければならないので、当たり前ですが、人材が不足します。これにより募集コストが上昇し、企業の売上が増えるわけではないことを考えると、非常に悩ましいところです。
採用・労務管理のコストも含めて、人材活用の方針を策定していくべきでしょう。
②社会保険適用対象者を確認する
パートアルバイト従業員の労働条件や労働状況の実態を確認し、適用対象者を洗い出します。
③適用拡大後の社会保険料を算出する
今のうちに絶対行っておかなければならないのが、適用拡大後の企業負担の社会保険料の算出です。この保険料分が、経営にどの程度影響をもたらすのか把握し、対策を講じる必要があります。
中小企業の多くは、必死に利益を出している状況です。社会保険料の増大のコストを価格転嫁することは容易ではありません。賃下げや賞与の削減、昇給の抑制を行う企業も増えるかもしれません。しかし、増加したコストを価格に転嫁するのか、その他のコストを削減するのか行えなければ、企業の資金繰りは非常に厳しくなっていくでしょう。
④社会保険適用対象者本人の意向を確認する
社会保険の適用は、要件に当てはまれば、本人の意思にかかわらず社会保険に加入するのが原則です。とはいえ、中には「配偶者控除内で働きたいので社会保険への加入したくない」と難色を示す従業員がいるかもしれません。社会保険に加入したくない従業員が、適用拡大によって該当する場合、従業員本人にしっかりと説明し、今後の意向を確認しておくべきでしょう。どうしても加入したくないという場合は、加入要件に該当しない労働条件に週の所定労働時間を20時間未満に変更すれば適用から外すことはできますが、その分従業員の収入は減ってしまいます。
また、その代わりに新たな人材を雇用する必要がでてくるかもしれません。新たな採用コストも発生するでしょう。まずは従業員本人とよく話し合うことが必要です。収入を106万円以内まで下げて扶養内で働くのか、それともリミットを外して働くのか、目先の負担でなく長期的な視点で話し合ってはいかがでしょうか。
⑤雇用管理の徹底が必要になる
労働日数や労働時間など、企業はパート・アルバイト従業員の雇用管理を厳格に行わなければなりません。シフト管理や人材確保も社会保険の適用・非適用を踏まえた上での管理が必要になってくるでしょう。
また適用を受けない短時間のパートアルバイト従業員については、適用の要件に該当しないようにする運用していく必要がありますし、現場でマネジメントを行なう従業員への教育も必要です。パート・アルバイト従業員が適用要件に該当するにもかかわらず、社会保険の未加入が判明した場合には、遡及して支払いが発生するなど、経営に与えるインパクトは計り知れません。
今のうちに、具体的な雇用管理策を講じておきましょう。
巷では、いろいろなうわさ話が流れています。
大事なことは、パート社員の方への正確な情報の提供だと思います。正確な情報をお伝えして、その上で、その方がどうするのか?
どうしたいのかをお聞きし、できることとできないことをしっかり伝え、当たり前の話ですが、信頼関係に基づく、労使関係を構築することが一番大事なことであると考えます。
ユーチューブ動画をご用意させていただきました。是非、ご利用ください。
パートタイム労働者の社会保険加入義 パートの働き方が大きく変わる!2022年10月〜社会保険の適用拡大(35分47 秒)
ホームページ: http://www.inokyuu1125.jp/16546992026090
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