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物流クライシス(上・中・下)24年問題、変革の契機に 対価なき労働や低い生産性

物流クライシス(上)24年問題、変革の契機に 対価なき労働や低い生産性

物流クライシス(上)24年問題、変革の契機に 対価なき労働や低い生産性 

4月上旬の午前7時前。東京都府中市にあるスーパーに伊藤ハム米久ホールディングス(HD)の商品を積んだトラックが着いた。ドライバーは商品を冷蔵庫に置くと、足早にトラックに乗り次の目的地へ向かった。

従来は商品を店内に運び、棚に陳列までしていた。同社の商品を運ぶドライバーは19時間の労働時間のうち、4時間は運転以外の業務ということもあった。

業務が変わる契機となったのが、4月からドライバー職を対象に始まった時間外労働の上限規制だ。同社を含む食肉大手4社は小売りに対し、2023年以降、陳列などの業務を廃止するよう要請してきた。

 伊藤ハム米久HDでは数百社と交渉し、現時点で9割超の理解を得られた。竹内大介・物流統括部長は「危機感を小売りに共有してもらえた」と手応えを語る。

4月からの長時間労働の是正をきっかけに、人手不足や多重下請け構造といった物流業界が抱える問題があらわになった。同時に解決に向けた動きも出始めた。

「年明け以降、元請けの大手運送会社や荷主企業との値上げ交渉がしやすくなってきた」

長距離トラック輸送のアイ・ティー物流(千葉県大網白里市)の田中仁一社長は物流業界の苦境について理解が広がったと感じている。

 多重下請け構造

同社は約30人の社員を抱える中小企業だ。石油化学製品や電子部品の輸送を荷主企業や大手運送会社から請け負う。これまでは一度に数%上げるのが精いっぱいだった。

もっとも、田中社長は「下請けが見下されたままだ」とも話す。取引先で荷降ろしに使うフォークリフトを操縦するなど、契約にない「運転以外」の作業を荷主から求められる実態は変わりそうにないからだ。

 こうした作業に対価はない。フォークリフトの操縦に必要な保険料はアイ・ティー物流が実費で負担している。

物流業界は下請けが何層にも連なる多重下請け構造で成り立つ。運送会社だけで約6万社ある。従業員300人以下の中小が99%を占め、多くは下請け会社だ。中小零細の悲鳴は元請けや荷主には届かない。

 野村総合研究所の小林一幸氏は「中抜きが多いため運転手の賃上げが難しく、仕事の受発注にかかる調整業務の負担も大きい」と指摘する。

日本生産性本部によると、運輸・郵便業の1人あたりの労働生産性は全産業と比べ約2割低い。ドライバー不足が懸念される「物流2024年問題」を奇貨とし、物流業界は生産性を上げていく必要がある。

 M&A(合併・買収)助言のレコフ(東京・千代田)によると、23年の運送業界のM&A件数は70件だった。30件前後だった14~16年に比べて2倍以上に増えている。新潟県地盤の運送会社、マルソー(同県三条市)は2月、同業の産業運輸(新潟市)を買収した。「人材を確保し、取り扱い分野を広げながら物流網を拡大していく」(同社)

 

商習慣や経営を抜本的に見直し、先手を打つ柔軟な取り組みが求められている。

物流クライシス()運転手にキャリア形成を  希望者少なく、離職者は多く

 

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食品輸送のアサヒロジスティクス(さいたま市)は2022年秋、埼玉県川越市にある自動車教習所を買収した。「30年前のような『習うより慣れよ』では若い人材は集まらないという危機感があった」と、教習所運営会社の塚本圭介常務は買収の経緯を説明する。 

免許取得後押し

免許取得後に1年以上従事すれば取得費用は会社持ち。受講中は教習所に近い寮に無料で泊まれるようにする。教習所の申し込み手続きも会社側が行う。免許取得まで至れり尽くせりの対応だ。

物流業界は「3K」(きつい、汚い、危険)職場というイメージがつきまとう。会社側が動かなければ今の若者は集まらない。アサヒロジスティクスは2月までの1年半弱の間にドライバーの数を8%増やした。

 厚生労働省によると、道路貨物運送業に従事する人の平均年齢は23年で48.5歳だった。直近10年間で3.3歳上昇した。情報サービス業(40.6歳)や宿泊業(43.3歳)などと比べて平均年齢の高さが際立つ。

運送業は長時間の運転や荷物の積み下ろしなど体にかかる負荷が大きい。「一般的に5560歳が引退を考えるひとつの時期になる」(リクルートの宇佐川邦子ジョブズリサーチセンター長)

 若者の採用を増やすだけでなく、年をとっても働ける環境をつくらなければドライバーの減少に歯止めはかからない。

佐川急便を傘下にもつSGホールディングスは負荷が大きい作業をロボットに置き換える実験を始めた。人工知能(AI)を搭載したロボットがサイズや形状に応じて荷台に荷物を配置する。人に代わる労働力として実用化を目指す。

 上がらぬ賃金

物流企業は運転手として働く人たちのキャリア形成を示す必要がある。中小企業が大半を占め、年功序列の昇格・昇給制度がないケースも多く、賃金カーブは緩やかだ。

賃金構造基本統計調査(23年)によると、運輸業・郵便業の月間所定内給与は5054歳時に2529歳と比べ3割弱しか上がらない。全産業は4割超上がる。

 ドライバー求人サイトを運営するドラEVER(東京・港)の岡野照彦社長は「新人でもベテランでも運んで得られる運賃は変わらないため、経験を積んでも給料が上がりにくい。給与アップの仕組みが必要だ」と話す。

家具などの配送を手掛けるチグサ・ジャパン(群馬県太田市)は「運行管理者」という国家資格の取得を自社のドライバーに促す。シフトの作成や健康状態の把握などを担う資格で、ドライバーの管理職にあたる。

運行管理の仕事は運転が肉体的につらくなった人も就くことができる。給料が上がることもある。門馬千草代表は「運転以外の選択肢を増やしていきたい」と話す。

 労働政策に詳しい中央大学の阿部正浩教授は「就労人口が減少するなか、働いた量だけで賃金が決まる仕組みは限界がある」と指摘する。

 

新型コロナウイルス禍を経てオフィスワーカーの働き方は変わった。運転手など現場で働く人たちも働き方や、賃金体系を変える時機に差し掛かっている。

物流クライシス()海路も鉄路も老い鮮明 弱点は人手不足以外にも

長距離運送を手がける武蔵通商(東京都武蔵村山市)の沢田仁社長は、土日や年度末の夜間に高速道路の工事が増えていると感じるようになった。「迂回や渋滞に備えて従来より1時間半ほど早めに出発するようにしているが、その分の労働コストを顧客に転嫁できていない」と漏らす。 

工事で配送遅れ

日本初の高速道路が尼崎―栗東間に開通したのは1963年。それから60年以上がたち、現在の総延長は9000キロメートルを超える。

その多くが老朽化に直面している。東日本高速道路(NEXCO東日本)などNEXCO3社のうち開通40年を超える区間は202312月末で37%に達した。

 工事が増えた結果、物流は停滞する。ヤマト運輸は23年に翌日配達エリアを縮小した理由のひとつに「老朽化した道路の速度規制」を挙げた。

人手不足が懸念される「物流の24年問題」を契機に、その脆弱さがあらわになった日本の物流。解決すべき課題はドライバー不足だけではない。

トラック輸送が限界に近づくなか、政府は別の輸送手段に切り替える「モーダルシフト」を後押しする。今後10年で鉄道や船舶の輸送量を2倍にする目標を立てるが、ともに問題を抱えている。

 「倍増の壁高い」

鉄道貨物は東京―大阪間など主要幹線のダイヤがすでに過密状態だ。線路設備の老朽化も深刻で、終電後の保守点検にかける時間は今後増える。JR貨物の犬飼新社長は「夜遅く出発して朝に到着するといった需要がある列車は運行を増やしにくい。輸送力倍増のハードルは高い」と打ち明ける。

 国内貨物輸送の4割を担う内航海運も、将来的に輸送力を維持できるかの瀬戸際にある。

「船員の高齢化や人手不足というトラックと同じ問題を抱えている」。日本郵船の曽我貴也社長はこう訴える。

国土交通省によると、ピークの1974年に71269人いた内航海運の船員は2022年には28097人に減った。約半数を50歳以上が占める。

 港のインフラも老朽化に直面する。流通科学大学の森隆行名誉教授は「国が目指す輸送量倍増には新たな航路を作る必要があるが、新たに港に輸送する物を集めることは難しい」と話す。

物流網をどう立て直すべきか。佐川急便の本村正秀社長は「デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みが不可欠だ」と語る。

 政府は23年に発表した「物流革新緊急パッケージ」で高速道路での自動運転トラックの推進などを盛り込んた。24年度から新東名高速道路の一部区間に自動運転レーンを設置する方針だ。

海運業界では53社・団体が参加し、無人運航船プロジェクトが進む。22年には世界で初めて無人運航の実証実験を成功させた。今後、大型の船舶や複数の船舶の遠隔運航などにも挑み、25年までの実用化を目指す。

既存の物流システムの老いは避けられない。次世代モデルの創出が急がれる。

石崎開、山口和輝、逸見純也が担当しました。

ユーチューブ動画のご案内

2024年4月19日(金)録画  

物流クライシス(上・中・下)  19分30秒

HPhttp://www.inokyuu1125.jp/17134094887033

 

ユーチューブ動画: https://youtu.be/fe0mhUWdUfA

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