google-site-verification: google0f9f4f832944c3e4.html

 

物流クライシス コスト優先の30年 14万人不足、10兆円の損失

 

物流クライシス スト優先の30年 14万人不足、10兆円の損失 

20244月からトラック運転手の時間外労働が年960時間までに制限される。人手不足に加え労働時間が短くなることで、物流が停滞する「2024年問題」が迫る。「経済の血液」とされる物流を止めない取り組みは待ったなしだ。 

トヨタは値上げ

トヨタは物流会社に支払う料金を上げる方針を打ち出した。1次取引先からトヨタへ部品を運ぶ2030社が対象。244月から残業時間が短くなると運転手は手取りが減ってしまう。トヨタは料金を引き上げて運転手の年収を維持し、部品輸送の担い手の離職を防ぐ。 

運び方も変えた。料金引き上げに先駆けて、複数の部品メーカーを1台のトラックで回って部品を引き取る「ミルクラン」方式を一部地域で導入した。部品メーカーからトヨタに納入していた従来の「お届け物流」より必要な運転手が12%少なくてすむようになった。 

日本の多くの企業にとって、物流はコスト削減の対象でしかなかった。1990年の通称「物流二法」の施行に伴う規制緩和で運送業者が増加。荷主側の力が大きくなるとその傾向が強まった。 

日本ロジスティクスシステム協会によると、全業種の売上高に占める物流費比率は新型コロナウイルス禍前の2019年で4.9%1995年と比べ1ポイント以上低い。 

日本のものづくりの強みである「ジャストインタイム」は、無駄な在庫を持たないために、多頻度少量の配送が欠かせない。その影響が物流の現場に及んでいた。 

そうした状況が人手不足で一気に変わる。NX総合研究所(東京・千代田)によると25年度で14万人の運転手が足りず、13%の物が運べなくなる。物流の停滞による需要減で、30年には国内総生産(GDP)が10兆円押し下げられるとの試算もある。企業にとってトラック確保が事業継続の上で最優先課題となる。

 積載率低く4割

物の値段の上昇は避けられない。物流各社は値上げ交渉を進めており、運賃相場は12割上がるとの見方が強い。食品卸大手、三菱食品の京谷裕社長は「価格に転嫁せざるを得ない」と話す。 

就労人口が減る日本では、24年問題は賃金改善だけでは解決しない。4割程度と低い積載率を向上させるなど、新たな対策が求められる。 

輸送を鉄道や船舶に切り替える「モーダルシフト」も重要だ。自動車部品製造の村上商会(東京・目黒)は、岩手県から岐阜県への部品輸送を鉄道に替え始めた。「今は鉄道の方がコストがかかるが、244月以降は逆転する」(生産業務部の長谷川隆通氏)と見込む。 

政府は10月、24年問題に対応するため「物流革新緊急パッケージ」を打ち出した。共同輸送の促進や、自動フォークリフトの導入などで運転手不足を補う。岸田文雄首相は「即効性の高い取り組みを経済対策に盛り込み速やかに実行に移す」と語った。 

日本ではどこから仕入れるかというサプライチェーン(供給網)戦略はあっても、誰がどう運ぶかという物流戦略はメーカーにも小売りにもほとんどなかった。運転手を増やす取り組みもなされてこなかった。官民を挙げてデフレ時代の物流システムを見直す時だ。 

日本型サービスに転機 安く遅くか高く早くか? 

「販売の半分が関東向けなのに……」。福岡県筑後市でブランドいちご「あまおう」を生産する下川大輔さんは頭を抱える。 

農産物3割滞る

20244月からトラック運転手に残業規制が適用されると、まず影響が出るのが農産物輸送だ。福岡から関東へ1人の運転手で輸送する場合、来春からは収穫から販売まで中3日と、これまでより1日多くかかる。いちごの「おいしさ」にとっては、この1日が命取りだ。 

JA全農ふくれん(福岡市)はフェリーとトラックを組み合わせれば従来通りの時間で輸送できると試算するが、「コストは23割程度上昇する」(岩井順将園芸総合対策課長)。 

24年問題は日本全国から安く・早く運ぶ物流網を揺るがし、生活に大きな影響を与える。トラック不足により3割の農水産物が運べなくなるとの試算もある。遠隔地でとれた生鮮食品を食べるには、より高い支払いをしなければならない。 

最悪のケースは店頭から商品が消えることだ。欧州連合(EU)離脱で外国人運転手が減った英国では、新型コロナウイルス禍に運転手不足が原因で一時スーパーの棚から生鮮食品がなくなった。244月以降、日本でも同様のことは起きうる。 

実際、小売企業は店舗配送を途切れさせないための対応に追われている。即時納品ができなければ、店舗にいつでもどんな商品もあるというきめ細かな対応が難しくなる。 

セブン―イレブン・ジャパンは今秋から全国の約2万店超を対象に、店から発注のあったカップ麺や菓子類などの配送を当日中から翌日に変更した。運転手の数を最低限で回せるようにする。「マンパワーで素早く納品する今までの仕組みは持続できない」(同社) 

バス・タクシーも

今回の残業規制はトラックだけではなく、バスやタクシーなど様々な運輸サービスの自動車運転手も適用対象となる。 

沖縄県では修学旅行シーズンの1012月に1200台分の観光バス運転手が不足している。路線バスも全国各地で運転手不足を理由に減便や値上げが相次ぐ。 

警察庁によると大型免許の新規交付者数は10年で2割弱減った。少ない運転手を業種の垣根を越えて奪い合い、各所で運転手不足に伴うひずみが生まれている。 

自動車による輸送は生活に根ざしたサービスを支えてきた。それが途絶えれば、そのサービスが立ち行かなくなる。 

24年の新生活シーズンではトラック運転手不足による「引っ越し難民」が懸念されている。企業が一律に41日付の地域間異動辞令を出しにくくなる時代が近づく。 

高いコストを負担して早く届けてもらうか、遅くてもいいので安く届けてもらうか。インターネット通販では、LINEヤフーが遅い配達を選べばポイントを付与している。フリーマーケットアプリ大手のメルカリは、ゆっくり届く配達にした利用者に値引きを検討している。 

安くてきめ細かな対応が強みだった日本の小売り・サービス業。運転手不足により転換点に立っている。 

気づけば「後進国」の危機

省人化・ドライバー待遇で遅れ

年間に宅配される小包の数が1000億個超と日本の20倍以上に達する中国。内陸部にある新疆ウイグル自治区の田舎であっても、住民はネット通販の当日配送サービスを利用できる。 

「ばら積み」が壁

街中を走る自動運転車や、荷積み作業を効率化する自動倉庫などの物流テクノロジーが、広大な国土での当日配送を可能にする。ネット通販大手の京東集団(JDドットコム)傘下の京東物流は202212月期だけで30億元(約600億円)超を研究開発(R&D)に投じた。「『午前注文、午後受け取り』のサービスを中国の数百の都市で展開している」。担当者はこう胸を張る。 

自動運転技術を使った京東集団(JDドットコム)の配送車(6月、江蘇省宿遷市)

運転手不足は各国共通の課題だ。国際道路輸送連盟(IRU)が22年に出した報告書によると、世界で260万人以上のトラック運転手が足りない。危機感をようやく持ち始めた日本に対し、世界は対策に動いている。 

NX総合研究所(東京・千代田)によると、米物流大手のUPSは世界で1000以上の特許を出願している。配達・集荷や在庫管理を効率化するシステムなどの特許で、省人化を進めている。流通経済大学の矢野裕児教授は「物流テックで日本は後れを取っている」と指摘する。 

日本勢も省人化技術の導入を急ぐが、ハードルは高い。日本ではメーカーごとに異なる大きさの段ボールをトラックへ積み込む「ばら積み」が多く、省人化の妨げになっている。段ボールや、段ボールを載せる「パレット」の規格統一は待ったなしなのに、その道筋は見えていない。 

米は給与1600万円

トラック運転手の待遇改善も遅れている。米小売り大手ウォルマートは入社1年目の運転手に最大11万ドル(約1600万円)の給与を支払うと公表した。 

一方、日本のトラック運転手の賃金は400万~500万円程度だ。野村総合研究所の小林一幸氏は「多重下請け構造の物流業界は中抜きが多く、運賃を上げても運転手の賃上げに寄与しにくい」と分析する。 

カギとなるのは働き手の多様化だ。日本のトラック運転手の女性比率はわずか数%だ。10%を超える米国と比べ少ない。 

従業員の女性比率を22年度で26%と、13年度比で9ポイント上げた佐川急便。短時間から働ける仕組みに加え、荷物の積み下ろし作業にかかる負担を減らす「スワップボディー車」を導入するなど、ハード面でも女性が働きやすい環境を整えた。女性が運転しやすいトラックの開発も必要となる。

 

物流大手SBSホールディングスの鎌田正彦社長は「テンポラリー(一時的)な労働力の確保も重要な選択肢だ」と柔軟な働き方の必要性を説く。国の規制緩和により、22年に軽乗用車での配達が認められるようになった。運転手不足の中で、単発で配送を請け負う「ギグワーカー」を活用しやすくする環境整備は今後も欠かせない。 

 

かつて日本は、配達の早さ、時間の正確さと高度な配送網で物流先進国と言われていた。潜在的な人材の活用が進まなければ、「物流後進国」に後退しかねない。

ユーチュブ動画のご案内

2023年11月4日(土)録画 

物流クライシス コスト優先の30年 14万人不足、10兆円の損失 18分49秒

ホームページ: http://www.inokyuu1125.jp/16990071406629

ユーチューブ動画:https://youtu.be/d3sHRda6x4w

 

 

 

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

090-6483-3612

フォームでのお問合せ・相談予約は24時間受け付けております。お気軽にご連絡ください。

新着情報・お知らせ

2021/02/19
ホームページを公開しました
2021/02/18
「サービスのご案内」ページを更新しました
2021/02/17
「事務所概要」ページを作成しました

井上久社会保険労務士・行政書士事務所

住所

〒168-0072
東京都杉並区高井戸東2-23-8

アクセス

京王井の頭線高井戸駅から徒歩6分 
駐車場:近くにコインパーキングあり

受付時間

9:00~17:00

定休日

土曜・日曜・祝日