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労働組合用語集
資料のご案内
連合東京|労働組合のみなさんへ - 用語集
https://www.rengo-tokyo.gr.jp/glossary/
目次
1.オルグ
2.共済制度
3.組合員
4.組合専従者
5.組合費
6.最低賃金制度
7.36協定
8.三役
9.CSR(企業の社会的責任)
10.支部・分会
11.春闘
12.女性活躍推進法
13.情宣活動
14.組織内議員
15.組織率
16.大会
17.ダイバーシティ
18.単組・産別
19.団体交渉
20.男女共同参画社会
21.チェック・オフ制度
22.中核的労働基準
23.ディーセント・ワーク
24.同一労働・同一賃金
25.ナショナルセンター
26.非正規雇用
27.不当労働行為
28.不払い残業(サービス残業)
29.ブラック企業
30.ベースアップ
31.ポジティブ・アクション
32.メーデー
33.USR
34.ユニオンショップ・オープンショップ
35.リストラ
36.労使協議
37.労働協約
38.労働契約
39.労働三権
40.労働三法
41.労働組合
42.ワーキング・プア
43.ワーク・ライフ・バランス
44.ワークシェアリング
1. オルグ
オルグ
オルガナイゼーション(organization/組織、組織化)の略語。労働組合が組織拡充のために勧誘活動をしたり、組織強化のために下部組織や組合員に対して教育・指導する行為をさす。
労働組合の発展や組織強化に欠かせないオルグ
労働組合は、働く人々を組織化することで成り立っています。とくにオープンショップ制を採る労働組合においては、組合に属していない従業員に、加入を勧めることが組織強化の原点。組合活動の必要性や魅力、メリットを、誠意をもって伝え、加入を促していくことが重要です。
なぜならば、組合員一人ひとりの運動課題への理解が低いと、組織としての団結力が弱まり、要求を勝ち取ることが難しくなるからです。また、執行部との距離を縮めることが、求心力を向上するための基本であり、日常的に現場との接点を持つことが望まれます。
オルグにあたっては、執行部として労働組合を取り巻く状況をきちんと理解し、諸問題に対して十分な知識と認識を持っていることが必要です。また、現場の組合員の状況に応じて、自分の言葉でわかりやすく語っていくことが大切です。
さらに、オルグは一方通行なものではなく、組合員の生の声を聞き出し、要求としてまとめていくという側面があります。そのため執行部には、組合員が納得 いくように説明できる力だけでなく、さまざまな意見や思いを聞き出す力、さらには出された意見を要求まで高めていく力が欠かせません。
2. 共済制度
助け合いを基本理念に同一の職業や地域の組合員で助け合う保障制度。
労組の基本理念である「助け合い」の精神から生まれた共済制度
一般的に保障事業をさす「共済」という言葉には「お金を出して互いに支え合うこと」や「相互扶助」という"助け合い"の意味があります。労働組合の原点は組合員の力を合わせて労働環境を改善していくという"助け合い"の精神です。共済制度もまた、長時間労働や低賃金の中で病気やけが、不慮の事故などに見舞われた労働者を助けるために生まれました。
共済制度の特徴は保険と違い、組合員とその家族のみが加入できることや、利益を目的としていないため掛け金が比較的低いこと。JA共済・コープ共済などが知られていますが、働く人を対象とした共済制度として全労済や産別、単組ごとに様々な共済制度がつくられています。
労働組合で運営している共済には組合員の職場環境や仕事内容に合わせたプランがあります。共済の担当者も職場環境を把握しているため、組合員はきめ細やかなサポートが受けられるのがメリット。共済制度を利用している同じ職場の人や組合員からプランの利点や実例を聞くこともできます。
「助け合い」の理念から生まれた労働組合と共済制度。労働組合としての活動で労働条件・労働環境を改善し、共済事業で組合員の生活をサポートする。この2つが両輪となって機能することで、組合員はより、安心で充実した暮らしを得ることができます。
3. 組合員
ある特定の目的をもってつくられた組織の構成員のこと。労働組合の場合は一般に管理職以外の従業員が加入対象となる場合が多い。
労働組合の主役は「組合員」
春闘、団体交渉などの活動を行っている労働組合。ともすると、活動の主軸は、役員が担っているように見えますが、労働組合は「組合民主主義」が基本。主役は一人ひとりの組合員です。組合員がいなければ労働組合を動かすことはできません。ではその「組合員」の権利や義務を改めて確認してみましょう。
<権利>
・組合役員を選べる、立候補できること
・組合活動に参加し、自由に意見を述べること
<義務>
・組合の決めた規約や決定事項に従うこと
・組合活動に積極的に参加すること
・組合費を納めること
労働組合とは、労働者の権利を守り、働く環境をよりよくするための組織。待遇や職場環境で不満に思うことがあれば、組合を通じて声を上げることができます。
現在では非正規雇用が増え、組合員数も減少しています。平成25年の労働組合員数は987万5000人。組織率は17.7%まで落ち込み、統計を取り始めた1947年以降過去最低の状況です。組合員が少なくなれば、労組としての機能も低下してしまいます。非正規雇用者も同じ働く仲間として組合参加を促し、働く人の団結力を高めていくことが課題です。
4. 組合専従者
業務を休職・離職などして職場から離れ、組合活動を専門として行う人。
専従者・非専従者の役割を活かし、組合の活性化へ
労働組合の役員には組合活動だけを行う専従者と、会社の業務と組合活動を両立させる非専従者がいます。
専従者は休職して、職場を離れますが、組合活動により専念できるメリットがあります。積極的に研修や交流会に参加できるため、他労組とのつながりを強化したり、知識やスキルを高め、組合活動のレベルアップを図ったりすることが可能です。
一方、非専従者は職場で働きながら組合活動を行うため、職場の様子がわかり、組合員の声を聴きやすいのがメリットです。職場状況の把握や、組合員への呼びかけ、意見交換など、組合と職場の橋渡しを担います。
このように、それぞれ役割がありますが、専従者は大規模な組合に置かれることが多々あります。専従者の給与は組合費から支払われているため、財政的に余裕のある大きな組合でなければ難しいのです。小規模な組合では、非専従者の負担が多くならないよう、組合員と協力し合うことが組合活動を進める上で大切になります。
専従は組合活動のさらなる向上に貢献し、非専従はより身近な場所で組合員の意見や要望を吸収する。専従と非専従がそれぞれのメリットを活かすことで、組合がより活性化し、組合員の積極的な参画にもつながっていくのです。
5. 組合費
労働組合がさまざまな活動を行う上で必要となる費用で、組合員から集められる。
組合費の用途を周知し、より活発な組合活動を
労働組合の活動に必要な資金は、組合費で賄われます。具体的な用途は通常、大会で決定されますが、主に、会議や運営等を行う際の組織活動費、専従役員への給与、オルグ活動や組合事務所の光熱費・設備維持費などに使われています。組合活動は人とのつながりを基本とするため、組合費の徴収も直接組合員とあって行いますが、人数が多い組合では、「チェック・オフ制」という、経営者が労働者へ支給する給与から、組合費を控除するという制度で徴収される場合もあります。
組合費の金額は、一定額もしくは賃金額に応じた一定率で計算されています。一定額を徴収する場合、労働組合は、勤続年数や、正社員・非正規社員によって給与に差があることを考慮して額を決定することが多くなっています。これは給与に占める組合費の割合が大きくなりすぎると、組合員の負担が増えるだけでなく、支払うこと自体に納得を得られなくなってしまうからです。他にも、組合費の用途がわかりづらい場合や、組合員であるメリットが実感しづらいと、組合費の支払いへ不満が生まれる恐れがあります。
労働組合の活動は組合費によって支えられています。組合費が、労働条件・環境の向上や改善、福利厚生、地域貢献などにつながっていることをしっかりと周知・情報発信していくことは、労働組合にとって必要不可欠です。組合員に活動内容が見えるようになれば、労働組合への信頼度・満足度が上がり、活動への積極的な参加を促すことができるでしょう。
6. 最低賃金制度
使用者が労働者に支払う賃金の最低額を定めた制度のこと。
自分の職場の最低賃金を知っていますか?
最低賃金には、都道府県ごとに異なる額が定められる地域別最低賃金と、特定の事業や職業に定められる特定(産業別)最低賃金の2種類があり、いずれか高い方の最低賃金が適用されます。地域別最低賃金は、パート・アルバイトなどの非正規労働者を含む全ての労働者とその使用者が対象です。労働者に必要な生活費や、一般的な労働者の賃金、企業が支払うことのできる人件費などをもとに最低賃金審議会で審議され、毎年変更されます。また特定(産業別)最低賃金は、その地域の基幹産業など、地域別最低賃金よりも高い金額を定めることが必要な産業が設定の対象です。最低賃金を下回る額で労働契約を結んだ場合は無効となり、最低賃金額と同じ額で労働契約を結んだものとみなされます。
最低賃金制度は、労働条件を改善するだけでなく、労働者にとってのセーフティネットの役割も担っています。労働者への最低賃金の周知を徹底し、最低賃金を下回る労働を厳しく取り締まることで、ワーキングプア問題解消へと近づき、また、最低賃金を上げて所得が底上げされれば、格差の縮小にもつながるのです。現行の最低賃金には地域間に大きな差がありますが(2014年10月:東京都888円、沖縄県など7県677円)、地方の最低賃金が上昇すれば、地方で働く若者が増えることも予想されます。そのため連合は、最低賃金審議会に労働者側代表として委員を送り、毎年の最低賃金額引き上げに向けて取り組んでいます。
7. 36協定
労働基準法第36条に規定されている、時間外労働に関する労使協定をさす。労働者を長時間労働から守る重要な協定である。
労働者を守る"36協定"の締結と正しい運用は、労働組合の責務
36協定は労働者を長時間労働から守る、最も重要な労使協定の一つです。労働基準法では、週40時間、1日8時間を法定労働時間とし、それ以上の時間は労働させることを禁止していますが、一般的な企業活動の中では、納期や顧客対応などの理由により、残業や休日出勤もやむを得ないケースが多いのが現状です。そこで、企業は例え一人でも労働者に法定時間外労働や、休日労働をさせる場合、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合においては労働者の過半数を代表者する者と労使協定、36協定を締結しなければなりません。
36協定では、労使の合意のもとで、残業や休日出勤の上限を定めます。加えて、36協定で定めた上限を越えても、特別な事情(決算業務や繁忙期など一時的な業務)がある場合、年6回までは限度基準(月45時間、年360時間)を越える一定の時間を労働時間として設定することができる"特別条項"についても労使で取り決めます。無制限に時間外労働が認められ、過重労働や労働環境の悪化につながらないよう、企業と労働者は36協定を通じて、適切な時間外労働について取り決めを交わしているのです。
しかし今、36協定に付帯するこの特別条項の増加が、労働条件を悪化させる要因になっていることも少なくないと問題視されています。特別条項として定められている特別延長時間には、法律上の限度がありません。極端にいえば、厚生労働省が定める過労死ライン(月80時間)を越える、月100時間と設定し、労働者にそれだけ残業させたとしても違法にはならないということになります。つまり、特別条項の定め方によっては、36協定が労働者に過重労働を強いる原因ともなりうるのです。
長時間労働の蔓延やブラック企業の増加を防ぐため、36協定を労使間で正しく結び、運用していく役割は本来、労働組合が担うべきもの。しかし近年、長引く景気低迷により非正規雇用者が増加し、正社員が減少しています。それに伴い正社員で組織された労働組合のなかには、「職場人数の過半数」を確保できない組合もでてきています。そのような労働組合では今後、非正規雇用者の組織化に注力する必要があります。非正規雇用者を組合員として迎え入れることで、36協定の締結の条件である「職場人数の過半数」を満たし、労働者を守るという役割を担い続けていくことは労働組合の責務と言えるでしょう。
8. 三役
労働組合の執行委員のうち、委員長、副委員長、書記長の3つの役職のこと。各役職を別の呼称(委員長を会長、書記長を事務局長など)で呼ぶ労組も増えている。
労働組合の活動を維持し、発展させるための要
サービス残業、過労死、パワハラ、セクハラ……。労働にまつわる問題の多様化に伴い、労組の必要性は増しています。こうした多様な問題に向き合うためには、従来の労使交渉や職場環境の改善に加えて、労働組合の機能を高めたり、政策制度に関する問題に取り組むなど、幅広い取り組みが求められます。また、労組の活動は適切な組織運営があって初めて成り立つものであり、組織運営の中心として組織をリードする人材が必要です。
三役とは、労働組合の中心的な役割を担うトップリーダーで、概ね次のような役割をもっています。
・委員長…労組内での議案に関して最終権限を持つ
・副委員長…委員長の補佐にあたり、委員長が最終判断を下せない状況にある場合には、委員長に代わって最終権限を持つ
・書記長…組合員や雇用者の窓口となり、事務や会計、日程調整、雇用者側の労務担当との調整や事前交渉などを担当する
三役を務める上で必要なのは、何よりリーダーとしての資質。当事者意識を持って現場の声をくみ取り、労組を代表して雇用者側に交渉するためのコミュニケーション能力や、問題解決への積極的な姿勢が大切です。加えて、労組を正しく導いていくための判断力と統率力、また労働を取り巻く環境の変化を直ちに捉え、時代に合った労組の在り方を導き出す柔軟な思考力も求められます。
さらに、幅広い知識や教養も大切で、労組、労働にまつわる法律、政治などに関して十分な知識があるからこそ、雇用者と対等に交渉したり、問題や課題を解決するための具体的な方策を立てることが可能になります。また、冒頭に述べたように、労組の必要性は日々高まっているものの、多くの労組はその存在意義を組合員、働く人に訴求できていない現状があり、そうした諸課題を克服していくことも求められています。
9. {C}CSR(企業の社会的責任)
Corporate Social Responsibilityの略。企業が社会に対して責任ある行動を取り、社会とともに発展していくこと。
CSRは、企業に関わるすべての人のために
日本では、「CSR=企業が事業以外で行う社会貢献活動」というイメージを持つ人が多いですが、CSRとは、企業活動に「付随する」取り組みではなく、「企業活動そのもの」のことを指します。
企業活動を行ううえでは、顧客、株主、従業員、取引先、地域社会、自治体や行政など、数多くの利害関係者(ステークホルダー)が存在します。CSRとは、本来、企業がそういった様々なステークホルダーや社会全体に対する責任を果たし、全てのステークホルダーにとって利益となる活動であるべきなのです。
現状では、CSRへの取り組みは企業が主導しています。しかし、もともと従業員の雇用や労働とはCSRの中核に位置するものであり、労働組合の活動は自ずからCSRへと繋がっています。また、労働者は、企業側から意見を出すことができる唯一のステークホルダーです。コンプライアンスや企業倫理に問題があれば、雇用や労働条件にも影響を及ぼします。
そのため、労働組合にはより一層CSRに対する意識を高め、主体的に関わっていくことが求められています。企業の持続的発展を支えることは、労働者にとっても利益に繋がるのです。
労働組合がCSRに関与すると、企業側にもメリットがあります。労働者からの視点の導入によりCSRの質を上げることができ、企業価値が高まるからです。労働組合は、労使協議だけではなくCSRの観点からも会社について考え、活動していきましょう。
10.支部・分会
規模、組織形態、組合員数などに応じて、組合内の下部機構として置かれる組織。
本部と職場をつなぐパイプ役
労働組合の活動はボトムアップが基本であるため、組合員の声を集約して活動に反映させることが重要です。しかし、労働組合の規模が大きくなると、全国に組合員が在籍するケースも多くなるため、一人ひとりの意見に耳を傾けたり、組合活動を周知したりすることが難しくなります。そうした場合には、エリアや県などの単位で全国を区切り、支部を設置します。また、支部単位でも規模が大きすぎる場合には、さらにその下に分会を置きます。支部や分会は、より地域に密着し、組合本部と職場の橋渡しをする役割を担います。
支部・分会が行う組合活動は、大きく分けて3つです。
1.本部と職場をつなぐ
組合員から集めた意見をもとに、支部大会や支部委員会で支部の意思決定を行い、本部に意見を具申します。また、本部から発信された情報を、機関誌や集会等を通じて組合員と共有します(情報宣伝活動)。
2.支部・分会内での課題解決
職場で起きた問題について、会社との話し合いを通して解決を図ります。
3.組合員の団結力強化
支部・分会独自のセミナーやレクリエーション活動を実施します。組合員同士の交流を促し、意見を出しやすい環境をつくることで、働きやすい職場へと導きます。
このように、各職場における日常的な組合活動は、支部や分会が中心となって行います。日ごろの活動を通して組合の意義や役割を伝え、きめ細やかなフォローを入れることで、組合員にとって「いざという時に頼れる」支部や分会にしていきましょう。
11.春闘
「春季生活闘争」の略。働く人の賃金や労働条件の向上をめざした取り組み全体を総称した用語のこと。賃金闘争、労働時間闘争、政策制度改善闘争の3本柱を元に、労働組合が企業側に要求をする。また、秋に行う生活闘争は「秋闘」という。
春闘は組合活動の「柱」
春闘は1955年の春、当時のデフレ政策と対決するために始まりました。戦後の産業発展にともない、それまで企業別の単組が行っていた労使交渉だけではなく、同じ業種の上部団体と歩調を合わせて全国・全産業的な統一闘争をする必要が出てきました。春闘で産業別組合などの上部団体や連合とともに交渉を行うことで、同じ産業内で賃金の不均衡が生じてしまうといった弱点を補い、より効果的な交渉をめざしたものです。それ以来、春闘は組合活動の大きな柱となっています。
春闘といえば「賃上げ」が注目されがちですが、高度経済成長を経てバブル崩壊やその後の長期的な不況により、今日では要求の中身も多様化しています。こうしたなか、組合員の要求を一つでも多く実現させるためには、組合員が常日頃抱いている不平や不安、問題意識を執行部がきちんと吸い上げて要求内容に反映していく必要があります。
また春闘で重要なのは、組合員に「成果」を戻すということ。職場会などを通じて団交の経緯や成果などについて、適切にフィードバックしていくことが求められます。なお、春闘の妥結内容は、組合員とともに闘い勝ちとった成果として、機関誌などを通じて周知していくことも大切です。春闘を通じて、執行部と組合員がコミュニケーションを密にして、諸要求の実現とともに、活力ある組合活動を創出したいものです。
12.女性活躍推進法
女性が仕事で活躍できるよう、職場での平等な機会の提供や配慮を求めた法律。企業は状況把握と課題分析を行い、策定した行動計画を公表する義務がある。
労組の関与で現場の視点・声を活かした多様化の実現を
女性活躍推進法は、女性が仕事で個性と能力を発揮できるよう、仕事と家庭生活の両立に必要な環境整備を行う法律です。正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、2016年4月から、状況の把握・課題分析、行動計画を含む情報の周知・公表が従業員数301人以上の企業に義務付けられています。
課題分析は、採用者および管理職に占める女性比率や、勤続年数、労働時間の基礎項目と、育児休暇や有給休暇の取得率などの選択項目について行います。その結果分析によって、具体的な期間や内容、数値目標を盛り込んだ2~5年の行動計画を策定し、社内外へ周知・公表するのです。評価項目を満たした優良企業は、厚生労働大臣の「えるぼし」認定が受けられます。
行動計画の策定は事業主の責務であり、まずは経営トップが主導的・強力に推し進めることが必要ですが、より実効性の高い計画策定のためには、現場の実情を知る労働組合の関与が不可欠です。性差や雇用形態にかかわらず、全社的な意見集約で現場の声を行動計画・制度に反映し、会社と一緒に意識づくりを行うことが真のダイバーシティ実現につながるからです。
連合も「ディーセント・ワークの実現と女性の活躍の促進」「仕事と生活の調和」「多様な仲間の結集と労働運動の活性化」を目標とする「第4次男女平等推進計画」を通じて、幅広い分野への女性の積極的な参加を推進しています。単組でも組合員向けの調査で実態を把握するとともに、春闘などを活用して課題分析の段階から関わり、行動計画への反映を働きかけていきましょう。
13.情宣活動
情報宣伝活動の略語。労働組合が組合員との情報共有などを目的に、組合の方針や活動の内容等を発信する広報活動のこと。
情宣活動って、なにをするの?
労働組合は、組合員一人ひとりが参加することで成り立っています。情報発信を行う情宣活動は、組合員に活動内容を伝え、互いをつなぐ役割があり、労働組合にとって不可欠な活動だといえるでしょう。
また、労働組合は組合員一人ひとりの組合費をもとに活動しています。支払っている組合費が何に使われているのか、組合員の誰もが知りたいこと。そのため、組合費の使い道を開示することは、組合にとっての義務と言えます。つまり、「機関紙(誌)・ホームページ」は、組合費に対する領収書であり、定期的に発行・更新することが大事です。
情宣活動の役割をふまえた機関紙にするためには、4つの機能を満たすことが必要です。まずは、春闘や交渉実績など、組合の活動内容を伝える「情報伝達機能」、組合員の育成を目的とした「教育啓発機能」、組合員のつながりや組織の活性化を図る「コミュニケーション機能」、組織外に向けて告知をする「PR機能」が挙げられます。労働組合の方針や機関紙のコンセプトに沿ってこれらの4要素を適切な割合で構成することで、バランスのとれた情報提供が可能となります。
情報宣伝活動の略語。労働組合が組合員との情報共有などを目的に、組合の方針や活動の内容等を発信する広報活動のこと。
情宣活動って、なにをするの?
労働組合は、組合員一人ひとりが参加することで成り立っています。情報発信を行う情宣活動は、組合員に活動内容を伝え、互いをつなぐ役割があり、労働組合にとって不可欠な活動だといえるでしょう。
また、労働組合は組合員一人ひとりの組合費をもとに活動しています。支払っている組合費が何に使われているのか、組合員の誰もが知りたいこと。そのため、組合費の使い道を開示することは、組合にとっての義務と言えます。つまり、「機関紙(誌)・ホームページ」は、組合費に対する領収書であり、定期的に発行・更新することが大事です。
情宣活動の役割をふまえた機関紙にするためには、4つの機能を満たすことが必要です。まずは、春闘や交渉実績など、組合の活動内容を伝える「情報伝達機能」、組合員の育成を目的とした「教育啓発機能」、組合員のつながりや組織の活性化を図る「コミュニケーション機能」、組織外に向けて告知をする「PR機能」が挙げられます。労働組合の方針や機関紙のコンセプトに沿ってこれらの4要素を適切な割合で構成することで、バランスのとれた情報提供が可能となります。
情宣活動の手段は機関紙以外にも、議案書、ポスター、WEB媒体、メールマガジンなどがあり、それぞれの組合の特性や活動内容に合わせてツールを選択し、情報発信を行いましょう。また、SNSなどのITツールを活用し、組合員と双方向で情報を共有するなど、時代の流れに合わせた情宣活動も必要です。
今、労働組合に対する社会の関心が高いとはいえません。これからの情報宣伝活動は、労働組合の必要性を社会に向けて発信することで、組合の存在意義が確立するブランディングにも力を入れていくことが大切です。社会に必要とされる発信力の高い労働組合になることで、問題が多い労働環境の改善や社会問題の解決にもつながります。
14.組織内議員
労働組合が擁立する議員
組合員の想いを政治の場に届けるための手段
民主主義国家である日本では、選挙を行い、国民の代表である国会議員を選出します。しかし近年、投票率が大幅に低下しており、特に若者の政治離れは深刻な問題となっています。2015年6月に公職選挙法が改正され、選挙権が18歳から与えられるようになりますが、これは若年層の政治への関心を高め、積極的な参加を促すことも目的の一つとされています。
政治への関心を高めることは、労働組合にとっても大きな課題です。労働組合は、組合員の雇用を守り、より良い暮らしを実現するために、労使交渉を行い、処遇改善に向けた活動を行っています。しかし、社会保障や税金、産業政策などの課題は、業界や社会全体に関わる問題であり、一企業の労使交渉だけでは解決できないため、政治の場へ訴えていかなければなりません。
そこで、組合員の想いを政治の場まで届ける方法として、共通の理念を持った政治勢力・政党・個人と協力したり、組織内議員を擁立したりすることが考えられます。組織内議員は、会社や業界の実状に通じているため、組合員の想いを適切に政治の場まで届けてくれるとともに、組合員に政治をより身近に捉えてもらうための媒介にもなるでしょう。
ただし、憲法で思考や信条の自由が保障されている以上、組合が特定の政党や議員への投票を強制することはできません。労働組合が政治活動を行う場合は、その理由と目的を明確にするとともに、組合員一人ひとりの理解が得られるよう、広報活動などを丁寧に行っていく必要があります。
15.組織率
労働組合に加入している労働者の比率。
時代に合わせた対策で、組織率増加へ
戦後、労働組合の活動が合法化され、1947年からは組織率の調査が開始されました。調査開始直後は50%を超えていた組織率ですが、1970年以降減少を続け、現在は20%を下回っています。組織率の企業間格差も大きく、従業員数1000人以上の企業では50%を超えているにも関わらず、100人未満の中小企業では1%程度に留まっているのが現状です。
組織率低下の背景には、組合員数の多くを占めていた正社員が減少し、一方で非正規雇用者・パートタイム労働者が増加したことがあげられます。最近では非正規雇用者のみの労働組合が結成されたり、既存の組合でも組合員の範囲を正社員だけでなく非正規雇用者にまで広げたりするケースが増えてきていますが、正社員との処遇格差や組合費負担などの問題もあり、非正規雇用者の組織率増加は思うように進んでいません。
また、労働組合の存在意義が希薄化していることや若者の労働組合離れも組織率低下の原因のひとつです。戦後の労働運動では賃上げ要求などで成果を出してきた労働組合ですが、昨今の景気低迷により目立った活動が少なくなりました。そのため特に若者たちの間で労働組合について興味、関心が低いだけでなく、存在そのものを知らないといった労働者が増え、組織率低下につながっています。
組織率の低下は労働組合の影響力が弱まることを意味します。長引く不況の中で労働環境が悪化し、労働者の権利意欲が高まっている今だからこそ、労働組合は労働者、特に非正規雇用者を中心に、自身の持つ権利を再確認できる場をつくらなければなりません。また、職場のコミュニケーション強化によって生の声を反映し、労働組合の存在意義を広くアピールしていく必要があります。それに加え、学校などの教育現場で若いうちから労働問題について知り、考える環境をつくることも求められています。
16.大会
組合の最高意思決定機関のこと。組合の重要事項は大会の討議で決定するため、「最高決議機関」と位置づけられている。
大会は組合の方針を決定する場
会社では、経営者がめざすべき方向性を示し、上から下へとその考え方を浸透させるトップダウン型が一般的です。しかし、労働組合はボトムアップ型が基本。組合員の意見は、支部・分会単位でまとめられ、上部機関に集約されます。これは、労働組合が自主的、民主的な組織であり、主役が組合員であるためで、そのことを組合民主主義といいます。
大会は、組合員全員、または組合員に選ばれた代議員で議決する場で、大会で決定する内容は組合員の声を集約した事項。労働条件や働く環境の改善等、組合員の生活に直接関連する事項も大会で決議します。
大会に際して重要なのは、組合員の声、職場の声を可能な限り広く吸い上げて集約すること。そのため、支部・分会で職場集会を開いて議題を論議するとともに、組合役員は、日頃から組合員と交流を図り、悩みや疑問点などの意見に対応することが求められます。大会前になって急に組合員の意見を集めようとしても中身は伴いません。日頃から組合員の意見に耳を傾け、できる限り多くの声を吸い上げる。それこそが、役員に求められる役割です。このように集めた組合員全員の意見を議案とし、議決する場が大会です。だからこそ、大会は組合の「最高決議機関」として位置づけられるのです。
マメ知識
大会は最低でも年に一回は開かないと労働組合法の基準を満たすことができません。組合の民主的な運営を推進するためにも、大会は必ず年一回以上は開催するようにしましょう。
17.ダイバーシティ
年齢、性別、価値観、ライフスタイル、人種、障がいなどの違いを受け入れ、それを活用すること。激しく変化するビジネスの世界において、個々の「違い」を積極的に活用することで、企業の競争力・成長力を高める企業が増えている。
ダイバーシティは組合で支える
ダイバーシティとは一人ひとりが持つ多様性を受け入れ、活用することを意味しています。性別、国籍、障がいなどを理由に、差別をしたり、派遣や請負型で働く人の処遇が低いままに据え置いたりすることは、多様性を認め合う考え方とは相反することです。ダイバーシティを成立させるためには、正しい概念や活用事例を身に付けること、お互いの理解を深めることを含め、コミュニケーションの促進が重要になります。
一般的にダイバーシティは企業が推進するものととらえられていますが、多様性を認め合い、誰もが働きやすい職場づくりをすることは組合がめざす方向と同じです。労働組合も組合員に正しい知識を持ってもらうためのセミナーや周知活動、悩みを持つ組合員の相談対応などを通じて、ダイバーシティの考え方を浸透させる役割を担っているのです。
また、まず職場の実態を把握し、多様な要望を整理しながら「職場をどう改善すべきか」を会社側に提案することも労働組合の重要な役割です。場合によっては、人事政策の立案にまで踏み込んだ対策も必要になるでしょう。いろいろな人の立場を考え、意見を平等に集め、"誰もが"働きやすい職場づくりを進めることで、すべての人のディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を保障すること。そのことが、本当の意味でダイバーシティを成立させることにつながるのでしょう。
18.単組・産別
単組は「単位組合」の略称。一つの企業に所属する組合員で構成されることから「企業別労働組合」とも呼ばれる。「産業別組織」(産別)は同一産業の分野で単組が結集したもの。
単組と産別で補い合って、より良い職場づくりを
同じ会社で働く労働者が集まった組合を「単組」と言います。単組の役割は、組合員の意見を集約して、職場環境や待遇など労働条件の改善について、会社側と交渉を行うこと。職場の状況を深く理解しているため、企業経営環境が変化したときの対応や企業特有の制度についての意見・提案にきめ細かく対応できます。
産業別組合は、同じ業界や業種の企業別組合(単組)が集まって構成された連合体です。単組の活動だけでは解決できない、各産業全体の政策・制度の課題や賃金・労働時間の改善に取り組みます。
単組だけの活動では企業の枠内での発想・視野に留まってしまう懸念がありますが、産別に加入することで、同じ業界・業種の他企業の状況が把握しやすくなり、組合活動の幅が広がります。また単組は、産別の主催する研修やセミナーに参加して人材育成を行うことも可能です。不当労働行為などのトラブルがあった場合には産別の顧問弁護士や上部団体に相談して対策を立てることもできます。さらには、産別のスケールメリットを活用した、一般的なものよりもお得な共済制度を組合員が利用できるようになることも、単組が産別に加入する大きなメリットといえます。
単組は組合員一人ひとりに寄り添った細やかなケアを行い、各企業特有の制度を改善する一方で、産別や連合などの上部団体と連携して、より幅広い活動を行っていく。単組と産別はそれぞれの利点を合わせることで、より強固な体制で組合活動を行うことができるのです。
19.団体交渉
労働組合(または労働者の団体)と使用者との間で行われる交渉のこと。労働条件や労使関係上の取り決め、労働協約の締結などを目的として行われる。団交と呼ばれることも多い。
団交は労組の権利
賃金などの労働条件は個々の労働者と使用者との合意により決められるのが原則です。しかし、労働者一人ひとりが経営者と交渉するのは現実的には難しく、労働組合が組織されている企業・団体では労働組合が代表して会社と団体交渉を行います。
労働組合による団体交渉は憲法28条の中の「団体交渉権」として保障されています。使用者が正当な理由もなくこの交渉を拒否することは不当労働行為、つまり憲法違反にあたります。一方、労働組合は組合員の代表として、職場の声をできる限り集約して交渉に臨むことが求められます。しかし現実は、組合員の声が労働組合に伝えられていないという指摘も少なくありません。
たとえば、連合は2014年11月に「ブラック企業に関する調査」を実施。自分の会社がブラック企業だと認識している人に「どこかに相談したことはあるか」という質問をしたところ、「職場の労働組合に相談した」と回答した割合は全体の0.9%という数字が出ました。職場環境を改善するためには、現場の声が労働組合に届く必要があるにもかかわらず、伝わっていない現状を真剣に受け止める必要があるでしょう。
労働組合の基本は往復運動。役員は現場に足を運び、相談会を開くなどして、組合員の声を聞く場を増やすことが大切です。また、機関紙などに「相談コーナー」を設ける、ホームページにメールフォームを設置するなどして、組合員が労働組合に対して気軽にアクセスできるような工夫も必要でしょう。現場の声が労働組合に集約する環境を整え、その声を把握し、職場の構造的な問題に置き換えて交渉に臨むことで、団体交渉は意味あるものになります。
20.男女共同参画社会
男女が対等な立場で、責任を分かち合い、性別関わりなくその個性と能力を十分に発揮でき、かつ政治的・経済的・社会的及び文化的利益を受けられる社会のこと。
男女が平等に活躍できる職場づくりは、労組のチカラで
男女の平等をめざすことを目的として掲げた法律には、「男女共同参画社会基本法」と「男女雇用機会均等法」があります。男女雇用機会均等法は雇用に関する事項のみ規定している法律である一方、男女共同参画社会基本法は社会活動全般に関して規定している法律です。
以前は日本にも、男性優位の風潮がありましたが、戦後の民主化で男女平等が権利として謳われ、1985年に男女雇用機会均等法が制定されたことで、女性労働者の活躍が奨励されるようになりました。その後、男女雇用機会均等法は2度に渡る改正を重ね、雇用管理の見直しや女性の職域拡大に貢献してきました。一方、男女共同参画社会基本法は1991年に施行され、雇用だけでなく、政治・経済・社会のあらゆる分野において男女が共同で参画できる社会の実現をめざしています。
安倍政権は今、女性が輝く社会づくりを掲げ、女性の活躍を促進する施策に取り組もうとしています。背景には少子高齢化の問題が深刻化し、女性の労働力がより求められている雇用状況を指摘することができます。しかし、そのかけ声とは裏腹に待機児童の問題を始めとした課題に対するアプローチは弱く、男女共同参画社会基本法の理念を十分に浸透させるまでには至っていません。
労働者の雇用を守り、働く環境を良くするのは労働組合の役割であり、男女共同参画社会の実現も、労働組合が取り組む大きなテーマです。男女共同参画社会を実現するためには、差別のない職場環境づくりが重要であり、労組はそれぞれの職場に適した形の環境改善の任を担うべきです。また、労組はポジティブ・アクションの推進、育児・介護支援制度の拡充、ワークライフバランスの実現などにも積極的に取り組んでいかなければなりません。具体的な取り組みとしては、男女共同参画社会基本法などの法制度の周知や女性役員の積極的登用、ハラスメント防止対策促進などが挙げられるでしょう。
21.チェック・オフ制
会社が賃金から組合費を控除すること
組合費=組合員の賃金が原資であることを忘れずに
労働基準法第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。そのため、従業員の賃金の一部を組合費として控除する、チェック・オフ制を導入するには、労働者の過半数以上が所属している労働組合と労使協定を結ぶ必要があります。
厚生労働省の調査によれば、チェックオフが「行われている」労働組合は、91.0%に上ります(※)。導入のメリットは、組合費を徴収・納入する手間が省けることです。またチェック・オフ制を導入していることは、労使関係が安定していることの証とも言えるでしょう。
一方で、組合費が自動的に引き落とされることで、組合員は、自分が組合員であるという自覚がなくなってしまうこと、また組合側も、組合費徴収の労が不要なため、組合活動が形骸化しやすいことなどが懸念されます。
チェック・オフ制がない組合では、組合員一人ひとりの顔を見て、意見を聞きながら組合費を徴収しています。そのため活動が組合員の期待に応えられない場合、徴収そのものが困難になるなどの緊張関係が強いられます。
したがって、チェック・オフ制を導入している組合執行部は、あらためて組合費は組合員の賃金が原資であることを肝に銘じ、組合員に向き合った運動を進めていくことが大切です。
(※出典:平成23年労働協約等実態調査の概況)
22.中核的労働基準
ILOの4分野8条約で定められている最低限の労働基準。
最低限の労働基準、早期批准に向けて行動しよう
中核的労基準は、仕事で守られるべき最低限の労働基準です。最低限の労働基準とは、ILO(国際労働機関)が基本8条約で定める「結社の自由及び団体交渉権」「強制労働の禁止」「児童労働の実効的な廃止」「雇用及び職業における差別の排除」の4分野を指します。
日本は創設当初からILOに参加し、政労使とも長年理事に選出され、政府は常任理事国を務めています。しかし加盟国の約4分の3がこの8条約を批准しているのに対し、日本は「強制労働の廃止」(105号条約)と「雇用と職業の差別禁止」(111号条約)の2条約を批准していません。特に111号条約の未批准国は、G7では米国と日本のみです。
日本が2条約を批准できない理由のひとつに、公務員の労働基本権を制限し、ストライキに懲役刑を定めた法律が105号条約に抵触することが挙げられます。また過去に、同一報酬を定めた110号条約を批准し、男女の賃金格差でILOから何度も是正報告を求められているため、111号条約の批准や差別撤廃の具体的改革には、経済界も政府も消極的なのです。
人権教育の専門家は「憲法から見ても批准に大きな障害はない」と指摘し、連合も政府に全条約の早期批准を求め、ILO本部の専門家を招くなどしています。未批准のままでは日本の労働環境に対する国際的評価が下がる可能性も否めません。ILOの中核的労働基準を守るべきなのは、第一義的には国・政府と言えますが、企業や労働組合も遵守・実現する義務があり、各労組も批准に向けて組合員への中核的労働基準の理解を促すなど、役割の一端を担うことが求められます。
※ILO(国際労働機関:International Labour Organization)
労働者の労働条件と生活水準を改善する国際機関。労働の国際基準となる条約を、使用者・労働者・政府の三者構成の総会で採択する。加盟国は187カ国(2016年3月現在)。
23.ディーセント・ワーク
「働きがいのある人間らしい仕事」「人間らしいやりがいのある仕事」などと訳されることが多い。具体的には働く機会や権利が保護され、十分な収入を得られること、適切な社会的保護が受けられること、平等な扱いを受けることを意味する。
"人間らしく"働ける職場づくりを
ディーセント・ワークという言葉はILO(※)のファン・ソマビア事務局長の就任時(1999年)にILOの理念・活動目標として使用されました。「仕事の創出」「社会的保護の拡充」「社会対話の推進」「仕事における権利の保障」という4つの目標を柱にした「人間らしい仕事」を目指す概念です。
日本の雇用・労働の実情をみると、失業者やワーキングプア、雇用格差に加え、仕事量の増大による過労死やメンタル障害、有給休暇の未取得など、ディーセント・ワークには程遠いものがあります。また、日本企業の海外工場では、一部ではありますが、現地労働者による低賃金の改善を求めたストライキも発生しています。
日本政府は、「ディーセント・ワークの概念の普及と労働政策の推進を行い、実現に努めている」と表明していますが、具体的な行動が伴っていないという指摘もあり、かけ声倒れが懸念されています。
雇用形態を問わず、全ての労働者は仕事に見合った処遇を受ける権利があります。安心して働くためには、長時間労働の抑制や最低賃金の引き上げをはじめ、健康保険や厚生年金など社会保障制度の整備が不可欠。このような職場改善を行うためには、経営者に対して協議権利を持つ労働組合が声を上げることが重要です。
労働組合の活動を通じて、ディーセント・ワーク実現をめざし、海外の現地法人も含めたすべての労働者が働きやすい環境整備をめざしましょう。
※ILO…国際労働機関(International Labour Organization)。労働条件と生活水準改善を目的とした国連初の専門機関。
24.同一労働同一賃金
同じ仕事における時間当たりの賃金が、企業規模や雇用形態を問わず、産業横断的に統一されていること。
同一労働同一賃金の実現に向けた連合・産別の対応が重要
同一労働同一賃金は、「同じ価値の仕事内容であれば、同じ賃金にする」という考え方に基づく賃金政策をさします。政府は賃金などの格差是正に向けて、「非正規労働者の正社員化・処遇改善への助成金拡充」「非正規雇用労働者待遇改善支援センターの設置」などを打ち出し、非正規労働者の底上げを政策の柱の一つに据えてきました。けれども、同一労働同一賃金は各国共通の一般的な考え方でありながら、日本では長年にわたって実現できなかった課題。その常識的とも言える賃金体系が構築できずにいるのは、日本の雇用形態に構造的な問題が存在するからです。同一労働同一賃金を実現するためには、正社員と非正規社員の双方の立場から、構造的な問題を見ていかなければなりません。
バブル崩壊以前、派遣社員やパートなどの非正規社員は、単純労働などを通して正社員のサポート的役割を主に担っていたため、低賃金で働くことはやむを得ない面がありました。しかし、現在(2016年)、全体の労働者のうち約40%を非正規労働者が占める状況になり、業務内容も正社員と同様のレベルが求められるケースが増えています。ところが実際には、日本の労働の主力へと変わったにも関わらず、業務量が同じ場合でも、非正規社員の給与が正社員より大きく下回るケースがあり、問題になっています。
賃金の格差が縮まらない原因として主に挙がるのは、以下の2点です。
(1)正社員と非正規社員とでは、与えられる責任の大きさが違う
(2)正社員は異動や残業があり、非正規社員と働く条件が異なる
正社員と同様の仕事内容であっても、責任や条件などの違いを理由に、同一労働同一賃金の実現にブレーキがかけられている現状があります。
一方、正社員も長時間労働を強いられ、時給に換算すると給与に見合わないケースが見受けられます。"名ばかり正社員"という言葉があるように、正社員という名前だけが与えられ、過酷な労働環境の中で長時間業務を余儀なくされている正社員もいるのが現状です。同一労働同一賃金を実現するためには、非正規社員の賃金引上げだけにスポットをあてるのではなく、正社員の働き方も改善していく必要があります。
正規・非正規の問題は、個々の企業で事情が異なるため、企業単位で問題を捉えると焦点が絞りきれなくなるという側面があります。そのため、問題を横断的に捉えることができ、個別の企業の事由に影響を受けない連合や産別の役割が重要です。産別が問題を提起し、非正規社員の賃金引上げ、正社員の勤務時間の短縮化などを各企業に働きかけることが、同一労働同一賃金の実現のためには求められます。
25.ナショナルセンター
労働組合の全国中央組織。
全国の労働組合の中心となり、加盟する労働組合の支援などを行う。
すべての労働者のためにさまざまな課題に取り組む組織、ナショナルセンター
日本の労働組合はおもに企業別組合(単組)、産業別組合(産別)、ナショナルセンターの3層で構成され、ナショナルセンターが全国中央組織として全国の産別を束ねています。日本では、連合が最も加盟組合員数の多いナショナルセンターで、2015年12月時点で682万人の組合員が結集しています。
ナショナルセンターは、産別や個々の単組の働きかけでは解決が難しい課題に取り組み、労働組合を一体的に推進する役割を担っています。
例えば、労働者・生活者を代表する立場から、政策・制度についての提言を行い、政府・政党に働きかけをします。労働者全体の処遇や労働条件に関する方向性を打ち出し、春闘や最低賃金の引き上げに向けて働きかけるなど、労働条件や環境改善に取り組んでいます。さらに、安心して働き、暮らせるために、平和運動や自然災害の被災地・被災者支援などの社会貢献活動にも取り組んでいます。
また、これらの活動を継続するための基盤となる、労働組合づくりや組合活動の拡大・活性化の支援、労働問題に関する情報の発信や周知などの広報・教育活動もナショナルセンターの重要な役割です。
ナショナルセンターがすべての労働者の代表となって社会的な課題に対応することで、単組や産別が取り組む課題を、より根本的な部分から解決へと促します。そのため、産別や単組の役員・組合員もナショナルセンターの取り組みを深く理解し、自らの運動に反映させていくことで、活動の質を高めることが大切なのです。
26.非正規雇用
派遣社員、契約社員などの期間が限定された雇用や、正社員以外のパートタイマー、アルバイトなど。
非正規雇用者も労働組合の一員へ
非正規雇用者の数は年々増加を続け、2014年は約1,962万人に上りました。雇用者全体の37.4%を占め、働く人の実に3人に1人以上が非正規雇用で働いているということになります。90年代中盤以降の企業人員スリム化の動きに、99年の労働者派遣法の規制緩和もあいまって、企業は正社員数を削減し、低コストで雇用できる非正規雇用者で労働力を補うようになったのです。
現在では非正規雇用者の働き方は多様化し、労働時間が正社員並みとなるケースも増えています。しかし、保険・年金加入や賃金、福利厚生などの労働条件は、正社員と比べて不安定なまま。従来は配偶者控除の範囲内で働く主婦パートや学生アルバイト、高齢者パートが非正規雇用者の中心でしたが、生計を担う非正規社員も増えていることから、待遇の改善を求める声は大きくなりつつあります。
そうした中で近年、非正規雇用者の組織化を進める企業別労組が増えています。1970年以降、労組全体の組織率は低下を続けていますが、パートタイム労働者の組織率は1990年の1.5%から2013年には6.5%へ上昇し過去最高の数値を記録。組織化に取り組む労組の中には、非正規雇用の組合員を役員や執行委員、専従役員に加えている労組もあります。正社員組合員数の減少により36協定で必要とされる「職場人数の過半数」の確保が難しくなってきたことや、企業側も人手不足の中、非正規雇用者の意見を取り入れて人員を確保する必要性が出てきたことなどが背景にあると考えられます。
非正規雇用者が労組に加入すれば、組織が強化され、会社に対する意見力が上がることが期待されます。加えて、より現場に近い立場からの意見を会社に届けることができたり、正社員と非正規社員が同じ目標に向かって活動することで組合員間のコミュニケーションが活性化するといったメリットもあります。
組織化を進めるにあたっては、非正規雇用者の多様な意見にどう応えていくか、非正規組合員の組合への関心をどう高めていくかなどの課題もあります。それらの課題を非正規雇用者とともに乗り越え、処遇改善をめざして組織化に取り組んでいきましょう。
27.不当労働行為
経営者が組合活動の妨害行為をすること。
単組と上部団体が協力して働きかけることが解決に繋がる
「ストライキに参加したら解雇された」「労働組合の役員であることを理由に減給された」「団体交渉を拒否された」「組合から抜けるよう促された」など、組合活動が経営者によって妨害される事例は後を断ちません。これらはいずれも「不当労働行為」と呼ばれ、労働組合法第7条で禁止されています。組合活動は労働者の権利として法律で保障されており、こうした行為は許されるべきではありません。
労働者が経営者から不当労働行為を受けた場合、行為があってから1年以内であれば、労働委員会という行政機関に救済を申し立てることができます。そして、労働委員会による審査(調査と審問が行われる)の結果、不当労働行為と認定されれば経営者に対して救済命令(強制力のある行政命令)が出され、認められない場合は棄却されます。救済命令の内容は、「復職させる」「賃金を支払う」「団体交渉に応じる」「組合活動への介入や支配を禁止する」「謝罪文を掲示する」などです。審査の過程で話し合いによる解決が見込める場合は、労働委員会から和解を勧められることもあります。
こうした労働委員会への救済申し立ては応急措置として有効ですが、原因を根本から解決することはできません。なぜなら、「労働組合=経営に不利益をもたらす」と経営者が組合活動を誤解している場合、不当労働行為が再発する可能性が高いからです。実際は、組合活動によって職場環境の改善が進み社員の定着に繋がったり、社員同士のコミュニケーションを通じてチームワークが強化され、業務の質が向上したりと、経営者にとってもメリットが期待できます。ですから、組合活動が経営者にとってもプラスになることを理解してもらうことが重要なのです。
では、経営者に組合活動を正しく理解してもらうにはどうすればよいのでしょうか。単組だけでの働きかけが難しければ、上部団体である産別やナショナルセンターにサポートを求めるとよいでしょう。上部団体の経営者向けの周知活動と連携したり、実際に不当労働行為を受けた際にも、上部団体に依頼すればバックアップを受けることができます。単組が不当労働行為に対抗するためには、上部団体と協力して働きかけることが解決への近道と考えられるのです。
28.不払い残業(サービス残業)
法定労働時間を超えて働いた場合や法定休日に働いた場合、時間に応じた割増賃金が支払われない残業のこと。
職場の実態を知り、不払い残業抑制へ
法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えた場合、時間に応じた割増賃金が支払われるよう、法律で定められています。労働基準法では36協定を結ばずに時間外労働をさせること、使用者が割増賃金を支払わないことを禁止しており、労働者は割増賃金の請求が行えます。
しかし、日本では時間外労働をしても割増賃金が支払われない「不払い残業(サービス残業)」が、依然として横行しているのが実情です。昨年、連合が組合員を対象におこなった調査によれば、不払い残業をしている人は過半数にのぼっており、平均時間は月18.6時間。その原因として残業代を申請しにくい雰囲気、過重なノルマ、仕事を分担できるメンバーが少ないなどが挙げられています。
不払い残業は、統計上あらわれにくく、実態はなかなかつかめません。近年では厚生労働省をはじめ、連合、産別でも労働時間の適正化をはかっていますが、ノー残業デーや5時消灯などの取り組みを行っても、会社に残って仕事をしているケースもあり、表面的な情報だけでは抑制できない部分も。「自分の能力が遅いから」「不当な評価を受けたくないから」という理由で組合に相談できない組合員もいます。
労働組合の重要な役割は、組合員との交流を通して職場の実態を知ること。不払い残業を引き起こしている原因を突き止め、その原因をなくすための仕組みづくり、ルール化など、職場の体制を変えていくことが大切です。表面的な取り組みだけでなく、職場環境そのものを根本から見直すことで、不払い残業をなくしていきましょう。
29.ブラック企業
明確な定義はないが、一般的に長時間労働やサービス残業、高ノルマなどの過重・違法労働が常態化し、労働者を使い捨てにする企業などをさす。
企業の"ブラック化"を防ぐ、労働組合の存在
近年話題となっている"ブラック企業"。元々はインターネットサイトから発祥した造語でしたが、小説や映画に取り上げられ、瞬く間に世間へ広がりました。2013年度には流行語大賞を獲得するなど、今や社会的な問題の一つとなっています。
ブラック企業が増加した背景には、1つに20年以上続く日本の景気低迷があげられます。不況の中、生き残る手段として、従業員のコストを削減する企業が増加したことが原因だと言われています。また近年、企業のグローバル化で産業構造の変化とともに雇用の流動化や規制緩和がすすみ、これが終身雇用の崩壊につながり、非正規労働者の増加や不安定な雇用形態を生み出しています。
日本の景気がよく、求職に困らない時代であれば、例えブラック企業に勤めていても転職するという選択肢がありました。しかし、就職困難な今の時代では過酷な労働条件を強いられても会社を辞めることのできない人が増加し、ブラック企業の存在がより表面化したといえるでしょう。
ブラック企業の増加を防ぐには、労働組合の存在が重要です。労働組合が果たす役割は、労働者へのワークルール意識の譲成や、雇用制度、経営環境の変化に対応し、労働環境を改善するなど、多く挙げられます。しかし、ブラックと言われている企業の場合、労働組合が存在しないケースがほとんどで、連合、産別をはじめ、既存の労働組合がそれぞれの立場からすべての労働者を守っていき、取り組みをスタートさせることが重要です。
たとえば連合は、日本の労働組合のナショナルセンターとして、政府や関連団体などと積極的に交渉することが求められますし、産別は、業界全体で働き方を見直し、業界一体となって労働者環境の改善をめざすことが必要です。そして、単組は自らの会社の労働環境改善に取り組むとともに、取引先等の労働環境にも注意を払い、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が確保される環境づくりに貢献することが求められるでしょう。
30.ベースアップ
労働者の賃金を一律に引き上げること。ベアとも呼ばれる。
ベア獲得後の労働環境の変化にも注意を
昇給制度は企業によってさまざまですが、年功序列の賃金制度をベースにしている企業の場合、年齢につれて給与があがる「定期昇給(定昇)」と、「ベースアップ(ベア)」に区分されます。前者は年齢や社歴と連動したもの、後者はそれらと関係なく給与水準そのものを一律で引き上げるものです。
日本では1980年代までは物価上昇に伴い、2~5%のベアが実施されてきました。しかし、90年代以降は、デフレや不況の影響で、ベアを実施する企業が少なくなり、2000年代初頭からはベアの統一要求が見送られてきました。ところが、2014年の春闘で、連合はインフレ政策を受け、5年ぶりに統一的なベアを要求。大手を中心とした企業におけるベアと定昇を合わせた賃上げ率は15年ぶりに2%を超えました。
ベア獲得は労働者にとっては喜ばしいことですが、今は複数の問題をはらんでもいます。その一つは、2014年にベアを実現できたのは大企業が中心で、中小企業には波及していないということです。また、非正規雇用者はベア対象外という企業も多く、正社員と非正規雇用者の間に大きな給与の差を生んでいます。その結果、労働者間の賃金格差は拡大し、かつ非正規雇用者の割合が高まる傾向にあるのです。
また、ベアは一律で労働者の基本給を上げるため、その分企業の負担が増えます。そのため、業績悪化で給与支払が難しくなった場合に、人員削減の口実にされやすくなるという問題もあります。
労働組合の活動では「ベア獲得」に注力しがちですが、「ベア獲得"後"」の労働環境の変化にも注目しなければなりません。正社員だけでなく、非正規雇用者など幅広い雇用形態の組合員の声に耳を傾け、職場の様子に注意する。労働組合は、ベア獲得を組合活動の活性化につなげ、よりよい職場環境づくりのきっかけにできるよう、留意していく必要があります。
31.ポジティブ・アクション
男女労働者の格差解消のため、企業が自主的かつ積極的に行う取り組みのこと。
真の男女平等に向けて、労組が牽引役に
ポジティブ・アクションは、労働者の男女格差を解消し、実質的な機会均等を実現しようと、女性労働者のために企業が自主的かつ積極的に行う取り組みのことです。もともとは米国の人種差別に対する「アファーマティブ・アクション」をモデルにしたもので、後に欧州で女性向けの暫定的な改善措置を示す言葉として使われるようになり、広まりました。
ポジティブ・アクションの目標は、採用拡大や職域拡大、職場環境・風土改善などの5つを想定しています。具体的には数値枠を設定するクオータ制、先輩社員が個別支援を行うメンター制度などの手法により各社が取り組む事例が見られます。
しかしながら、日本の場合、企業の管理職の女性比率は各国と比べてかなり低水準で、実質的な機会均等はまだまだというのが実状です。その要因としては、結婚や子育てなどによる女性の離職率の高さが挙げられます。また男性は仕事、女性は家事・育児と、性別的な役割分担への意識が根強く影響していることも背景として挙げられます。
労働組合においても、女性が活動の中心的存在になっているところはまだ多くありません。組合役員(執行委員)に占める女性の割合は、会社の管理職に占める女性比率が上昇し始めた2000年代も増えていないのです。また労働組合も企業を構成するステークホルダーの一つであり、女性の声を反映した職場を作るため、女性の登用を積極的に図ることを企業に働きかけていくことが必要です。
32.メーデー
労働者が連帯して地位や労働条件の向上をめざして行動する日。「労働者の祭典」とも言われている。
メーデーですべての働く人々と団結し、労働者の地位を向上させよう
メーデーとは労働者が団結し、連帯して労働に関する権利を要求する日です。そのはじまりは1886年5月1日、アメリカの労働組合が「8時間労働制」を要求して行ったストライキ。以来、世界的に5月1日がメーデー(May Day)とされており、多くの国では祝日になっています。日本のメーデーは祝日でないため、組合員の参加しやすさを考慮し、その前後の土日に開かれることが多くなっています。
メーデーでは、デモ行進や集会、スローガンの採択などが行われます。その目的は労働者の地位や労働条件の向上、人権・労働基本権など権利の確立、民主主義の発展、平和活動など、労働者の労働環境改善や社会的連携です。近年では、様々な団体がブース出展やパフォーマンス、イベントを行って、組合員が家族で気軽に参加できる要素も取り入れています。
メーデーの役割は、労組の活動意義を確認するとともに、組合員同士が交流すること。メーデーに参加することで、多くの労働者の仲間がいることを実感でき、また、他労組や産別の活動動向を知るための良い機会にもなります。メーデーで得た知識や交流を、その後の組合活動につなげるキッカケにしましょう。
33.USR
Union Social Responsibilityの略。労働組合の社会的責任。
労働組合が持つ社会的責任を果たすことで、安心・安全の社会全体の進化に貢献する
USRとは、「CSR=Corporation Social Responsibility:企業の社会的責任」から派生した言葉で、労働組合の社会的責任(Union Social Responsibility)を意味します。
労働組合が社会的責任を担うこととは、労働組合の機能や役割を活用してステークホルダーや社会に貢献することであり、CSRにおいて「企業活動そのもの」が重視されるように「労働組合の活動そのもの」で社会的責任を果たしていくことが望まれます。
なお、USRという言葉は「University Social Responsibility:大学の社会的責任」を指す場合もあるので区別が必要です。
USRには2つの「責任」が存在します。
■「企業内労組としての社会的責任」:企業に対するチェック機能
労働組合の使命である「雇用を守る」ために、働く人の立場から企業経営をチェックする。また、労働環境の改善・ワークルールの制定などに取り組み、すべての働く人が安心・安全に誇りを持って働ける環境を作る。
■「社会的存在としての責任」:労働組合の人/資源を活かす働きをする
社会に対して何ができるかを考え、マンパワーや情報力・交渉力を資源として活用しながら、社会的課題の改善や地域社会の活性化に取り組み、共益(メンバーシップサービス)を広く公益につなげていく。
労働組合は企業にとって最も身近なステークホルダーです。企業経営を経営側に委ねるのではなく、企業統治を担う一員として積極的に役割を果たしていくことが大事です。
また、労働組合も社会を構成する一員です。これまでも人権問題や、平和行動といった社会的な課題に取り組んできましたが、今後も労働組合の機能を活かして社会貢献事業に取り組んだり、大規模災害時の被災者支援などに力を注いでいく必要があります。
なお、働きやすい社会を構築するために、働く人の声を集め「政策」として政治に訴えかけ、組織内外の世論を形成していくこともUSRのひとつとして捉えることができるでしょう。
労働組合の存在意義が問われている今、自らの運動を「社会化」することで、存在価値を高めていくことが求められています。これからの労働組合は、社会を構成する一組織であるという意識を持って行動すること、労働組合としての活動領域を広げて社会的責任を果たしていくことが重要です。
34.ユニオンショップ・オープンショップ
労働組合の加入形式。
労働組合のショップ制って?
労働組合への加入方法である"ショップ制"は、主にユニオンショップとオープンショップに分けられます。ユニオンショップとは、雇用された労働者について特定の労働組合への加入を義務付けており、組合をやめると同時に会社も解雇となる制度です。日本企業の半数以上は、このユニオンショップ制を導入しています(厚生労働省「労働協約等実態調査」より)。一方、オープンショップとは、雇用と労働組合への加入がリンクせず、組合に入るかどうか、労働者自身が選択する制度です。
ユニオンショップ制は、入社時に組合への加入を義務づけているため、組織拡大がしやすいことがメリットとして挙げられます。また、労働組合が特定のイデオロギーに左右されず、健全な組合活動ができることも、ユニオンショップ制のメリットと言えるでしょう。反面、労働組合への理解や知識が乏しいまま組合員となってしまうため、組合員の活動意欲を高めることが困難となる場合があります。
これに対し、オープンショップ制の組合員は、労組の活動意義に同意したうえで加入しています。また、組合員をやめた場合でも解雇とならないため、労働条件などの処遇に影響しないことがメリットとして挙げられます。しかし、雇用と組合への加入がリンクしていないため、組織拡大がうまくいかないことが課題となります。組織拡大ができなければ、労組が労働者を代表する地位を維持することが難しくなってしまうのです。
有意義な組合活動を行うためには、自分自身が所属する組合のショップ制のメリット・デメリットを把握したうえで、組合活動の活性化や組織拡大に努めることが大切です。たとえば、ユニオンショップ制ならば組合員の意識を高めるための取り組みを、オープンショップ制ならば、組合のPRや組拡のための情報発信を活発化させるような取り組みを行うとよいでしょう。
35.リストラ
英語の「Restructuring」の略語。債務の再構成・構造改革、また企業の買収や人員削減などの手段で事業内容を再編成すること。
雇用を守り、安心して働ける労働環境へ
1991年にバブル経済が崩壊し、それまで安定的な成長を続けてきた日本経済が急速に落ち込みました。企業は利益の確保を目的に、正社員から非正規労働者へと従業員をシフトするなど、人件費を抑制する動きが顕著になります。またその流れは、安易に解雇されない立場にいる正社員にも向かいました。多くの企業がリストラという名の人員抑制策を打ち出した結果、労働者を働きづらい労働環境に追い込んだり、早期退職制度の名目で退職を強制する事例が発生し、社会問題化したのです。
バブル崩壊から四半世紀が過ぎた現在、非正規労働者の割合は労働者全体の約40%までに増加。理不尽な働き方が強要される"名ばかり正社員"などの言葉も流布され、厳しい労働環境が続いています。
成長が鈍化した日本経済においてリストラを回避するためには、労働組合も経営的な視点を持って打開策を講じていくべきです。具体的にはまず、人員の削減は短期的な経済効果しか得られないことなどを、労使協議を通して説明し、安易にリストラを行わないように働きかけることが重要です。そしてリストラにより従業員のモチベーションが低下し、人材の育成が滞れば企業は成長できず、生産性は向上しないことをねばり強く交渉すべきでしょう。その他、雇用を確保するために、ワークシェアリングなどの新たな労働環境の仕組みを提案するなど、働き方そのものを改善する視点に立った取り組みも求められています。
36.労使協議
労働者と経営者による労働条件や職場環境についての話し合い。
話し合いは労使コミュニケーションの潤滑油
「団体交渉」が労使協約の締結を目的とするのに対し、「労使協議」は、賃金水準の改定、一時金、労働時間などについての意見交換や話し合いをすることが主な目的です。会社側が団体交渉を拒否することは不当労働行為に当たり、労働基準法で禁じられていますが、労使協議には法的拘束力はありません。しかし、労使協議を行うことは、労使双方にメリットがあります。
というのは、労使が話し合う場を持つことで、日々起きている労働をめぐる問題や職場環境に関する意見や考えを伝えやすくなるからです。また、意見を申し立て、具体的な改善がなされれば、働く人の労働意欲を高めることにもつながるでしょう。
経営者側の利点としては、自身では気付きにくい、現場で起きている問題や課題を把握できるという点が挙げられます。率直な意見交換によって、経営課題を発見することもできます。
労使協議を行う際は、あらかじめ協議の目的と論点を明確にすることが重要です。労使が情報交換をする場であっても、「ただの話し合い」をするだけでは意味がありません。労使双方にとって有意義な場となるようなテーマ設定が不可欠になります。定期的に労使協議の場を設け、有益な話し合いが行える環境づくりをすることで、労使間の相互理解を深めることにもつながります。労使協議は、さまざまな要求の実現を求める労働組合の最も重要な役割の一つだと考えられるでしょう。
37.労働協約
労働条件や労使関係のルールなどについて労働組合と使用者が交渉を行い、合意した結果を書面で取り交わした約束事。
労使関係を安定させ、働きやすい職場をつくる
労働協約の内容には、賃金や労働時間などの労働条件に関する取り決めや、団体交渉や争議行為などの組合活動に関する約束事などがあります。使用者との間で労働協約を結ぶことができるのは労働組合だけが持つ権利であり、組合活動の大きな目的の一つであるといえます。労働協約を締結すると、協約の有効期間中は一定の労働条件が保障されるため、労使関係が安定し、労働者は安心して働くことができます。労働協約の締結は、労使双方にメリットをもたらすのです。
労使協定と労働協約は、どちらも労使間の約束事ですが、効力の強さなどが大きく異なります(※表参照)。36協定などの労使協定は、労使間に権利や義務を生じさせるものではありません。一方で労働協約は労使間の権利や義務を定めるものであり、労働協約で定められた内容は就業規則や労働契約よりも優先されます。
労働協約を定めるための労使交渉を行うときは、労使間で合意した部分から順に協約を締結していくとスムーズに進めることができます。一つひとつの協約を個別に積み重ねて、理想的な労働条件に近づけていきましょう。また、労働協約は組合員の働き方を左右するものであるため、協約の内容を組合員に周知することも大切です。組合員の意見を集めたり、職場実態が協約通りになっているか等を定期的に調査するなどして、よりよい協約を作っていきましょう。
38.労働契約
労働者と会社(使用者)で交わされる契約。労働者が労務の提供をするのに対し、会社が給料の支払い、仕事内容や契約期間、勤務地や勤務時間などを約束する。
労働者を守るために欠かせない約束
労働契約は、労働者が労務の提供をするのに対し、会社が給料の支払い、仕事内容や契約期間、勤務地や勤務時間などを約束する、労働者と会社(使用者)の間で交わされる契約です。
会社は労働契約を結ぶ際、労働者に契約内容を、労働条件通知書という書面で明示する義務が課せられています。その項目には、働く時間(何時から何時まで 働くのか、残業の有無)、働く場所や仕事内容(どこでどんな仕事をするのか)があります。加えて、休み(休憩時間、休日がどれぐらいあるか)や、給料につ いての取り決め(賃金はどのように決まるか、計算と支払い方法、締め切りと支払日)、解雇の事由を含む退職に関する決まりごとも含まれます。
会社は一度締結した労働契約の条件を引き下げることは基本的にできませんが、経営が危機的状況であるなど特別な状況にある場合は、労働者から再度合意を得たうえで、条件を引き下げることが可能とされています。
労働者が自分の身を守るためには、労働条件通知書に書かれた契約内容や条件が求人票や募集要項と異なっていないか、あいまいな項目がないかを確認するこ とが大切です。また労組も、雇用関係を結んだ後も通知書を保管し、契約内容を確認することの重要性を組合員に伝えるとともに、労働契約に関して問題を抱え ている組合員がいないかチェックしましょう。
39.労働三権
労働者の基本的権利のことで、団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)の三つを言う。労働者が経営者と対等な立場で労働条件等を交渉できるよう法的に保障するもの。
労働組合の活動を保障する、労働三権の正しい理解を広めよう
労働三権をひと言で記すと、それぞれ下記のように言い表わせます。
・団 結 権……労働者が、労働条件の維持・改善のために団結する(労働組合をつくる)権利。
・団体交渉権……労働者が労働条件について、団結して経営者と交渉する権利。
・団体行動権……労働者が団体で行動し、ストライキなどの争議行為を行う権利。
労働三権は、日本国憲法によって保障された労働者の基本的権利です。日本国憲法の三本柱(国民主権・基本的人権の尊重・平和主義)のうち、基本的人権の尊重に含まれるものであり、一部の公務員を除き、すべての労働者に与えられています。日本国憲法制定前の日本では、労働運動は国家によって弾圧されていましたが、戦後の法改正により労働者の権利は保障され、労働運動が合法化されました。
労働三権を具体的に保障するために制定された法律を「労働三法」と言い、労働組合法・労働関係調整法・労働基準法の三つからなります。労働三法によって労働組合の活動は法により保障され、ストライキなどで企業に損害が出た場合も、組合員が賠償請求されることはありません。一方で、労働組合に属さない者が起こした、正当な争議行為以外で生じた損害については、関与した者は厳しく罰せられます。
現在、労働組合の組織率は過去最低を記録しており、その要因のひとつとして、増え続ける非正規雇用者の組織率の低さがあげられます。非正規雇用者の労働三権は有名無実化している職場も多く、ブラック企業問題の温床になっているのが現状です。労働組合の今後の役目として、非正規雇用者を含めた労働者の権利向上に努めるとともに、労働者が自身の持つ権利を理解するきっかけをつくり、労働三権の大切さと存在意義を伝え続けていくことが重要です。
40.労働三法
労働法の中心となる労働組合法、労働基準法、労働関係調整法の3つの法律の総称。
働く人は皆、法律で守られている
労働法とは、労働に関する法律の総称で、特に根幹となる3つを労働三法と呼びます。労働法には、「最低賃金法」、「労働契約法」、「男女雇用機会均等法」などの法律も含まれます。
労働三法の基本理念である「労働者の生存権」は、憲法第25条で定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が由来です。労働三法は、労働三権などの労働者の権利を保障し、対等な労使関係を実現することで、労働者の生活を支えるための法律です。労働組合の活動は労働三法によって保障されており、また労働組合は労働三法を遵守させる役割も担わなければなりません。
労働法の適用を受ける労働者は、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者(労働基準法第9条)」と定義されているため、パート・アルバイトでも労働法の保護の対象に含まれます。しかし、多くの若者が「労働者は法律で守られている」という事実を十分に理解していないため、ブラック企業などの問題に不安を抱える若年層が多い現状があります。そのため、労働組合には、若い世代が労働法を学ぶ機会をつくっていくことも求められます。働く人々の生活を守るためにも、労働法の周知に向けた積極的な活動を展開していきましょう。
41.労働組合
労働条件や労働環境の維持・改善などを図るために労働者が自主的に組織する団体で、会社(使用者)と対等な立場で契約交渉する権利をもつ。
労働組合=労働者の味方
時間外労働、パワハラ、サービス残業……。世の中の労働者が抱える問題は後を絶ちません。たとえ会社に訴えても、1人では話すら聞いてもらえないこともあります。そんな時に強い味方になるのが"労働組合"。会社側には団体交渉に応じる義務があるため、労働者が一緒になり、労働条件・環境の維持、改善を訴えることが重要となります。
そもそも、労働組合の起源はイギリスの産業革命、時代は18世紀に遡ります。当時は、資本家の力が強く、貧富の差が激しくなる中で、労働者は長時間・低賃金といった厳しい条件で労働を強いられていました。そうした過酷な労働条件に耐えられず、賃上げや人員の増加を求め、立ち上げた団体が労働組合のはじまりと言われています。
近年の日本でもブラック企業が話題となり、不当な解雇やサービス残業などの労働条件の悪化が大きな問題となっています。そのような中、会社側と対等な立場で交渉できる権利を持つ労働組合の存在意義は大きいといえます。さらに労働組合は、働く人々のワーク・ライフ・バランスを守る役割もあります。産業・雇用構造の複雑化や労働者の意識・働き方が多様化する中で、労働組合が果たすべき役割にも変化が求められていますが、"労働者を守る"という機能は今も昔も変わりません。
42.ワーキング・プア
働いて収入を得ているものの、収入が低く貧困状態にある労働者のこと。「働く貧困層」と訳される。
すべての働く人が適正な賃金を得られる社会へ
安定した生活を送るために、労働に対して適正な賃金を得ることは基本です。しかし、「働いているのに、生活が苦しい」年収200万円以下のワーキング・プア層は年々増加しており、所得格差が広がりつつあります。2012年時点で年収200万円以下の労働者は1090万人にのぼり、給与所得者の4分の1を占めています。1日8時間、フルタイムで働いても賃金が生活保護水準に達せず、生活を維持することが困難な人も少なくありません。
この背景のひとつに、90年代中盤以降の非正規雇用者の増加があります。派遣社員やパート・アルバイトなどの非正規雇用者は、正社員と同じように働いていても賃金が低い場合が多く、また全労働者に占める非正規雇用者の割合も増えており、2015年の調査では4割に達しています。
さらに、最低賃金水準が低いことも要因のひとつです。2015年度の最低賃金の全国平均は798円で、これでは1日8時間働いても年収200万円を超えることができません。
そこで連合は、独自に「連合リビングウェイジ」(労働者が最低限の生活を営むのに必要な賃金水準)を算出し、春季生活闘争の到達水準を決定する際の参考指標や、最低賃金審議会の主張の根拠などに活用できるよう提示しています。ワーキング・プア問題を解決に導くには、非正規雇用者の労働条件を改善し、雇用を安定させることが重要です。最低賃金の引き上げや、ワークルールの周知の徹底など、働く人の雇用や賃金を適正化することが求められています。
43.ワーク・ライフ・バランス
仕事と生活の両方がバランスよく充実し、互いに良い効果をもたらすこと。
仕事も生活も充実させ、相乗効果を生みだす
現在の日本は少子高齢化によって働き手が減少し、また一方で、育児や介護と仕事の両立が困難となり仕事を辞めざるを得ない人も多くいます。慢性的な人員不足は長時間労働を助長し、心身の疲労によって病を引き起こすケースが後を絶ちません。そんな中、仕事と生活を両立することのできる職場づくりが注目されています。
仕事と生活のバランスを重視する会社では、労働者は安心して働き続けることができますが、ワーク・ライフ・バランス実現のメリットは、企業の側にもあります。従業員の心身の健康維持による生産性の向上はもちろんのこと、プライベートが充実すれば、その中で得た知識が仕事で活かされることもあるでしょう。さらに、ワーク・ライフ・バランスの推進は、労働者一人ひとりのライフステージの変化に応じた働き方を支援することにもつながります。企業にとって、年齢や性別を問わない様々な人材の確保・定着は、ダイバーシティを形成する上で大切です。経済情勢の変化や多様化する消費者ニーズに対応していくためにも、ワーク・ライフ・バランスを実現して企業の競争力を高めることは重要となるのです。
こうしたワーク・ライフ・バランスの実現に対する取り組みは、労働組合の主要な活動テーマになっています。労働時間や各種制度の改善に向けての交渉はもちろん、労働に関する実態の把握や、相談・支援の拡充など、現場との距離が近い労働組合だからこそできる取り組みもあります。労働組合の活動を通じて働きやすい環境づくりを目指し、ワーク・ライフ・バランスを実現しましょう。
44.ワークシェアリング
一人でも多くの人が働けるように、労働者同士で雇用を分け合うこと。
労働の創出、ワークシェアリング
日本の失業率は、2015年1月時点で3.6%(総務省統計局の調査より)。なかでも、若者(15~24歳)の失業率は平均より高く、7.0%との数値が出ています。失業率を低下させ、働く基盤を形成するための働き方の一つとして、ワークシェアリングがあげられます。ワークシェアリングは、一人当たりの労働時間を短縮し、労働を分け合うことで仕事を確保する働き方をいい、主に2種類のタイプに分けられます。一つは、失業者を一時的に雇用する"雇用維持型"。もう一つが勤務形態を多様化することで、雇用の機会を与える"雇用創出型"です。
ワークシェアリングは、主にドイツやフランス、オランダなどの一部のEU圏で導入されてきました。なかでもオランダはワークシェアリングの成功例としてメディアなどに取り上げられています。
オランダは失業率が高く、長引く景気低迷に悩まされていました。景気回復のため、"雇用創出型"のワークシェアリングを導入した結果、11.3%あった失業率が、2.3%に低下し、長引く景気低迷を払拭できたのです。また、失業率を低下させただけでなく、社会保障費(生活保護費)の削減による効果も同時にもたらしました。
日本では企業ごとに独自の風土が存在しているため、オランダの事例がそのまま当てはまるわけではありません。けれども、少子高齢化が進む日本社会においては、年金の支給年齢が延びることが予想されるため、その期間を補うための働き方も含め、検討していかなければなりません。失業率の高い若者に対してだけでなく、年金受給までの雇用を確保する方法の一つとして、ワークシェアリングという働き方を考慮する時期にきているのでしょう。
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