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2024年4月8日(月)新日本保険新聞
はじめまして、今月からこの「コラム」に執筆させていただくことになりました「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久と申します。
まずは、簡単に自己紹介させていただきます。生まれは、1955年(昭和30年)11月25日で、現在68歳です。大学卒業後、1978年(昭和53年)4月に22歳で日本火災海上保険(株)に入社し、43年間、在籍した後、2021年4月1日に65歳で社労士・行政書士事務所を開業いたしました。
今回、このコラムの執筆をご依頼いただきましたのは、おそらく、私の「クレーマー・ヘビークレーマー対応」(大手損害保険会社苦情受付係3,144件の証言)の講演が評価されたのだと思っておりますので、まずは、その話をさせていただきます。
43年間の会社生活では、いろいろな仕事をいたしましたが、61歳からの4年間、本社の「お客さま相談室」という部署で、苦情受付の仕事をいたしました。
簡単に言えば、一日中、お客様からの苦情を聞く仕事で、社員の誰もが希望しない、正直、一番、行きたくない部署だと思います。しかし、私は「人が一番いやがる仕事なら、将来、何かの役に立つのではないか」という根拠はないのですが、何かに期待したことを思い出します。
仕事の内容は、お客さまからの苦情を受け付け、その内容を現地(主に損害サービスセンターの責任者)に伝え、対応を依頼する。ということなのですが、一つ間違うと、
「ちゃんと聞いているのか」とか「そんなことも知らないのか」とか「お前、人を馬鹿にしているのか」というようなトラブルになりかねませんので、緊張の連続でした。
ただ、その中で、会得したことは、よく言われていることですが、「とにかく、相手の方の話を聞く」ということです。
1本の苦情電話の平均所要時間は、18分30秒くらいですが、最初の10分くらいは、途中であいづちくらいは打ちますが、原則として、こちらは話をせずにじっと相手の方の話を聞きます。そして、10分くらい経過すると、相手の方の話が途切れる時がきますので、その時に「こういうことですか?」と伺った内容の要約をさせていただき、「そうよ」とか「そうだ」というお応えをいただければOKです。それ以降は、こちらの話も聞いていただけるので、あとはスムーズに最後まで、会話することができます。なぜなら、「そうよ」「そうだ」は、この人はちゃんと話を聞いてくれる信頼できる人だという評価の証だからです。
ただ、最初の頃は、自分が知っていて、話ができる話題になるとどうしても話したくなってしまい、まだ、相手の方が2分~3分くらいしか話していないうちに「それはですね~」と話し出すと「まだ、私が話しているのになによ」「ちゃんと人の話を聞きなさい」と何度も叱られたものでした。
いろいろなことは起こりますが、基本的に、お客さまからの「まともな苦情」は、お客様のご主張が正しいか正しくないかは別にして、ちゃんとお客さまの不満足の内容を把握し、それを現地の責任者に伝え、しっかりと事実確認の上、対応するように依頼すれば完了です。
どんなにこじれている案件でも、間違いなく、対応することができます。
しかし、10件に1件程度は、不満足の表明ではなく、別の目的をもった方からの電話が入り、100件に1件程度は、その内容にひじょうに問題がある電話が入ります。
このような申し出のことを私は「クレーマー・ヘビークレーマー」からの電話と位置付けていました。逆に「まともなお客さまからの不満足の表明」の電話については、「クレーム」という呼び方はせず、「お客さまの声」と呼び、その内容を共有し、業務品質の向上につなげる取り組みをしておりました。
また、まともな苦情の電話は、誠心誠意、丁寧な対応をすればよいのですが、クレーマー・ヘビークレーマーに対し、誠心誠意というようなことは、全く通用しませんので、全く、異なる対応が必要です。次回は、この「クレーマー・ヘビークレー対応」について、ご説明させていただきます。
2024年5月13日(月)
こんにちは、「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久です。
前回は、私が保険会社勤務43年間の最後の4年間、在籍した損保ジャパンの本社お客さま相談室の話をさせていただき、その中で、まともな苦情は、お客さまの話をしっかりと聞き、
責任部署に正確につなげば、どんなにこじれた苦情でも解決に向かうが、最初から違う目的をもって言いがかりをつけてくる「クレーマー・ヘビークレーマー」には、誠心誠意とか心を込めてというような対応では、全く、通用しない。という説明をさせていただきました。
今回は、「クレーマー・ヘビークレーマー」とはどのような存在で、なぜ、彼らにつけ込まれてしまうのか、更には、どのように対応したらいいのかについて説明させていただきます。
まず、「クレーマー・ヘビークレーマー」とは何者かについてですが、
私は「商品・サービスに対する「不満足の表明」ではなく、別の目的をもって、苦情の名を借りて、ルール違反の攻撃をしてくる輩(やから)」と規定しています。
彼らの目的は一言では言えませんが、次のようなものです。
① 自分の「うっぷん」や「もやもや」や「不満」を自分に対し、決して攻撃してこない弱い人間相手に晴らす。
② 誰も褒めてくれない自分の知識や見識を決して逆らわない保険会社の「苦情受付係」
相手にひけらかし、自己満足に浸る。
そして、彼らの具体的な行動は
① ささいな問題を指摘し、「お前では、話にならないから、責任者に電話を代われ。」と自分の交渉力を誇示し、(お客さま相談室では、これを「エスカレ」(エスカレーションの略です。)と称していました。)その上で、さらに調子に乗ると、「わび状をよこせ。」とか「詫びに来い。」に発展することもあります。
② また、「保険会社の社員なのにそんなことも知らんのか。」とか 「わしは、昔、〇〇〇〇社の部長をしていたんだぞ。」とまくしたて、自らの過去の栄光をひけらかす人もいました。
よって、このような方の話をいくら誠実に丁寧に聞いても全く解決に向かいませんので、
私はいち早く、「クレーマー・ヘビークレーマー」と「まともな苦情の申立をするお客さま」の区別をするため「悪質クレーマーを見抜く7つのフレーズ」という定義を規定していました。
その7つは
①悪評をばらまくと脅す
②公的機関や監督官庁に訴えると脅す
③結論を急がせる
④暗に金品や特別待遇を要求する
⑤他社の対応を持ち出す
⑥こちらを懐柔しようとする
⑦社会通念から逸脱した謝罪を求める
です。
私は、この7つのフレーズの内、
1つ該当すれば「クレーマー―」
2つ以上該当すれば「ヘビークレーマー」と定義していました。
また、彼らの嫌がらせの手法は
①大声を出して、威嚇する。
②ねちねちと同じ話を延々と続け、電話を切らせてくれない。
③ ネット、新聞、監督官庁への連絡・投稿等を執拗に主張する。
ですが、
必ず繰り出す手法は、反社会的勢力が使う手法と同じで「因縁」をつけることです。
因縁とは、「波風が全くたっていない状況の中で、無理矢理波風を立たせ、相手に債務を負わせる行為」です。
具体的には、
① なんや、その目つきは、
② なんや、その態度は、
③ なによ、その上から目線のものの言い方は、
という因縁をつけて、無理矢理に「すみません」という言葉を引き出し、
「すみません」といった相手に間髪入れず、「どないするんや」と債務の履行を執拗に迫る行為です。
典型的な場面は、チンピラヤクザが街で真面目そうな若者に狙いをつけ、すれ違いざまに
「なんや、その目つきは」と因縁をつけ、反射的に「すみません。」と言ってしまった若者に「どないするんや」と債務の履行を迫り、もじもじしながら困り果てて「どうしたらいいのですか?」と命乞いをする若者に「そんなこと自分で考えろ」と言い、あっという間に金銭を奪い取る(カツアゲ)行為の最初の一言です。
電話の場合、目つきや態度はわかりませんので、受電係への因縁は
「なによ、あなたのその上から目電のものの言い方は」でした。
いろいろな会社でこの話をさせていただきましたが、特に電話対応をするオペレーターの方からは、「私もそのフレーズの因縁を幾度となくつけられました。」とのお言葉をいただき、「ああ、やっぱり、そうなんだ」と納得したことが幾度となくありました。
2024年5月13日(月)掲載記事
2024年6月10日(月)掲載分
こんにちは、「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久です。
前回と前々回で、私が保険会社勤務43年間の最後の4年間、在籍した損保ジャパンの本社お客さま相談室の話と、まともな苦情ではなく、別の目的をもって、苦情の名を借りて、ルール違反の攻撃をしてくる輩(やから)である「クレーマー・ヘビークレーマー」の使う手法までの説明をさせていただきました。
今回は、対応に際しての心構えと具体的な対応方法について、説明させていただきます。
まず、意外に思われかもしれませんが、心構えで一番大切なことは
① 解決しようなどと考えてはいけない。
ということです。
相手は、まともな理屈が通じる人間ではないのだから。
・物別れ大歓迎。
・納得する訳がない。
・長期戦になるならなればよい。
という覚悟を決め、
トップから最前線の社員全員が同じ視点で臨むことが何より重要です。
逆に言えば、同じ視点で臨めば、何もむずかしいことはありません。
そして、逆に上司が絶対に言ってはいけない言葉は
「俺は知らないからな。」「君たちで、何とかしろ。」です。
上司が、この言葉を発すれば、相手の思う壺です。
その結果として、最前線の社員が土下座をさせられたりすることになるのです。
また、
② 勇気をもって、NO(いやです。)という言葉を発することもひじょうに重要です。
具体的には
・穏やかにお話しいただけませんか。
・私、怖いです。
・このままでは、変になりそうです。
・このままでは、業務に支障をきたすおそれがあります。
・すみませんが、簡潔にお話しいただけませんか。
というような言葉を発することです。
また、
③債務を背負わない。(出来ない約束は、絶対にしない。)
・電話します。
・いついつまでに返事します。
・検討します。
・回答します。
・支払う方向で考えます。
等の不確実な約束は絶対してはいけません。
さらに、
④できる限り、証拠を残すことも極めて重要です。
・録音機による録音。
・防犯カメラによる録画。
場合によっては、警察に通報します。
出来る限り、「警察が動きやすい環境を整えること」が大事なのです。
その上での対応ですが、
私が実戦で編み出した必殺の言葉「イノキュウのキラーフレーズ」をご案内申し上げます。
「ばかやろう」「このやろう」の連発に対し、まず、
① 「おだやかにお話しいただけませんか」と小さな声でいいので、勇気をもって発していただきます。すると、「ばかやろう。」「このやろう」の罵声の音量が2倍になります。(私は何十回も使ってきましたが、間違いなく2倍になります。)
2倍の音量になった「ばかやろう」「このやろう」の連発に対し、
② 「おだやかにお話しいただけませんか」と2回目の申し出をしますと、
「このやろう。ばかやろう。」の罵声の音量が4倍(2×2)になります。
このように「ばかやろう」「このやろう」に対し、「おだやかにお話いただけませんか」を
3回、4回と繰り返しますと、音量が倍々に増幅し、16倍に達したころに
十分に引き付けておいて、最後に一言、ちいさな声でいいので、
「私、怖いです。」と言っていただきます。
すると、驚くことなかれ、相手はいきなりし~ん。と黙り込みます。
中には、「そんなつもりで言ったんじゃない・・・・・」等の言い訳をして、
たじたじと、退散し、二度と攻めてくることはなくなります。
私は、何十回となく、このフレーズを試してましたが、例外なく、し~んとなります。
では、なぜ、これほどの効果があるのでしょうか?
それは、彼ら、彼女らには、前科があったり、過去に痛い目にあった経験があり、
二度と痛い目にあいたくないのです。要は、警察が怖いのです。
そして、どういう状況になったら、警察が対応できるのかを熟知しているのです。
要は、法律をよく知っているのです。
たとえば、「怖いです。」と言った相手に罵声を浴びせ続け、その相手が医者に行き、
「心神喪失」等の診断書をとって、警察に届出れば、「脅迫罪」が成立する可能性があることを彼らは知っているのです。よって、プロであればあるほど、この「怖いです。」の一言は効果があります。
しかし、この「おだやかにお話いただけませんか」と「怖いです」を発するにはかなりの勇気がいります。ただし、私は、この理屈を社員の方が知っているだけで、いざとなったら、「怖いです。」と言えばいいのだなというように、気持ちに余裕ができ、絶望的な精神状態になることを防ぐ効果はあると思っています。ですから、使う場面がない方がいいのですが、できれば、「おだやかにお話いただけませんか」と「怖いです」の練習は、していただきたいと思っています。
2024年6月10日(月)(第3回)
2024年7月8日(月)掲載分
こんにちは「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久です。
前回までは、私が損保ジャパンの本社お客さま相談室で遭遇した「まともな苦情」ではなく、別の目的をもって、「苦情の名を借りて、ルール違反の攻撃をしてくる輩(やから)」である「クレーマー・ヘビークレーマー」の説明をさせていただきました。
今回は、現在の私の仕事の中心であります「働き方改革推進支援センター」の話をさせていただきます。
「働き方改革推進支援センター」とは、政府が2019年にスタートさせた「働き方改革」の推進に向けて全国47都道府県設置したセンターで、その概要は、「東京働き方改革推進支援センターのチラシ」の通りですが、事業主様のさまざまなお悩みや課題の解決に、いろいろな方法でお応えする機能を有したセンターです。
現在、私は、「東京」、「神奈川」、「千葉」、の3センターで、訪問コンサルタントの仕事をさせていただいており、1日に2社から3社、センターに支援要請をいただいた事業主様を訪問(Zoomミーティングを含む)し、「悩んでいること」や「困っていること」を伺い、解決に向けたアドバイスを行っており、延べ1,000社を超える事業主様の様々な相談に接してまいりました。今回からは、この訪問の中で、いただいたご相談の中から、具体名等は出せませんが、いくつかの事例をご紹介させていただきたいと思っています。
事業主様からのご相談は、作り事ではない「本気・本音・本物」の相談ですので、正直、即答できるようなことはめったにありません。しかし、原則、当日、どんなに遅くとも翌日、朝一番までに返事をするようにしております。この事業主様からのご質問・ご相談は、新米社労士の私にとっては宝の山なのです。なぜなら、この「本気・本音・本物」のご相談・ご質問に対し、ひとつひとつ懸命に対応してきた結果、知らない間に、力がついていたというのが実際のところです。
今回は、私が事業主様のところに伺って一番、よく聞かれる質問、悩みごとの相談について、お伝えさせていただきます。
面談時間は平均1時間くらいですが、やはり、最初はお互い緊張しているせいか、なかなか本音の話がでてきません。ただ、苦情受付の仕事と同じで、事業主様のお話を丁寧に粘り強く聞いていますと、だいたい、15分経過したころに「実はですね、井上さん。」というフレーズが出てきます。この「実はですね」がでたらしめたもので、「実はですね」からが本当の相談だと思っています。
そして、「実はですね」のあとに続く言葉は、ほぼ、全員と言っても過言でありませんが、「社員が採れないんです。」「すぐ、辞めちゃうんです。」「採用した社員が育たないんです。」の3フレーズです。別に私が誘導している訳ではないのですが、ほとんどの事業主様が同じことをおっしゃいます。最初はたまたま、同じことをおっしゃるのだろうと思っていましたが、いつまでたっても同じご相談が続くものですから、中小零細企業(もしかしたら、大企業も・・・)の事業主の方々は、本当に人のことで困っているのだ。と実感いたしました。
そして、そのあと、少ししてから出てくる言葉は「井上先生、どうしたらいいのですか?」です。 私は正直で作り話はできませんので、いつも、こう答えます。「申し訳ないのですが、私は打ち出の小槌ではございませんので、このような問題に対する答えは用意しておりません。」
ただ、それだけでは、あまりにも不親切ですので、過去に訪問した事業主様から伺った、人の採用に功を奏したいくつかの取り組み事例をご紹介させていただきますが、決定的な解決方法はありません。
特に中小零細企業の事業主様の最大の悩みは「社員が採用できない。」「採用した社員がすぐに辞めてしまう。」「社員がなかなか育たない。」であります。
2024年7月8日(月)掲載分
2024年8月12日(月)掲載分
こんにちは「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久です。
前回は、現在の私の仕事の中心であります「働き方改革推進支援センター」の話をさせていただき、ほとんどの事業主様が人の採用と育成に悩まれていることをお伝えさせていただきました。
今回は、その中でも、ひじょうに問題がある「不良社員」「クレーマー社員」の話をさせていただきます。
その前に、私が必ず事業主様に持参する資料のご案内をさせていただきます。
それは、①働き方のルール~労働基準法のあらまし~、②労働基準法素朴な疑問Q&A、③就業規則作成の9つのポイント、④令和6年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)、⑤働き方改革取組事例集、の5種類(表紙の画像をご確認ください)の資料です。この資料は、ひじょうにわかりやすくまとめられておりますので、私は事業主の方に「この資料を手元に置いておいていただけば、ほぼ、すべての課題に対応できます。是非、お手元に置いておいてください。」と説明の上、お渡ししております。
この資料はネットで検索でき、プリントアウトすることができますが、私の事務所には、お客さまへ持参用の現物がございますので、現物をご希望の方は、私の事務所にお越しください。お待ちしております。
話を戻しますが、私は1000社を超える事業主様のところに伺い、いろいろなご相談に接していりましたが、ひじょうに多くの事業主様が、「問題のある社員」の対応に悩んでおられることがわかりました。
一昨年(2022年)の9月にコンビニエンスストアを2店舗、30年間、経営されておられる事業主様のところに伺ったときの話をさせていただきます。
最初のご相談は、「助成金の活用」についてで、その話は比較的、早く済み、その事業主様と同世代だったこともあり、雑談をしておりましたが、訪問して約15分経ったころ、その事業主様の口から、
「実はですね、井上さん」と本音の合図の「実はですね、」が飛び出したのです。
「実はですね、井上さん」「このごろの社員ときた日にゃ、ちょっと、注意すると、口ごたえするんですよ。」さらに、「この前なんか、ちょっときつく言ったら、私に向かってくるんですよ。」「一体、どうなってるんですかねえ!」
私は、間髪入れずに、「社長、そんな社員、くびにすればいいじゃないですか!」
と申し上げたところ、「だけど、先生、うちは就業規則がないもので、同業者に相談したら、「それは就業規則がないのであれば、無理だ、くびにすれば、問題になるぞ!」と言われたのですよ。」 このようなやり取りがあり、まずは、しっかりとした就業規則を作成することにした次第です。
さらに、その半年後に再訪問した際には、このような悩みを打ち明けられました。
「半年前に採用したアルバイトから、「有給休暇をくれ。」と言われたので、有給休暇を10日与えたら、その翌日に、「来週から、今までは5日のシフトだったけど、2日にしてもらいたい。」と言ってきた。」と言うのです。
私が、「理由は何ですか?」と伺うと「よそでも働きたいから」だというのです。
間髪入れず、半年前と同じように「社長、そんな社員、やめさせればいいじゃないですか!」と申し上げたのですが、その後、社長の口から飛び出した説明にびっくりして、返す言葉もありませんでした。社長の説明は、「井上さん、その通りなのですが、あんな奴でも、辞めさせてしまったら、その後の人間がいないのですよ。ですから、あんな奴でも我慢して使わざるを得ないのです。」
この言葉に接し、現在の人手不足の深刻さを、身をもって実感した次第です。
いろいろな媒体が方の採用について発信していますが、出したくても収支を考えると社員が満足するレベルの賃金を出せない経営者が、どれほど、苦労しているのかを身をもって実感した瞬間でした。
2024年8月12日(月)掲載分
新日本保険新聞連載執筆原稿⑥(2024年9月掲載予定原稿)
こんにちは「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久です。
前回は、私が事業主の方から受ける相談の中で、ひじょうに問題がある「不良社員」「クレーマー社員」がいる話をさせていたました。
今回は、そのひじょうに問題がある社員対策用に2022年3月に「不良社員・クレーマー社員完全撃退マニュアル「おまえは、くびだ。」は絶対に言ってはいけませんか?」というセミナーを開催いたしましたので、その内容ご案内申し上げます。
はじめに
おかげさまで、社労士・行政書士イノキュウも開業してから、約11カ月が経過することになりました。この間、いろいろな経営者の方のお話を伺う機会に恵まれましたが、驚いたことにひじょうに多くの経営者の方が「不良社員」「クレーマー社員」「因縁をつけてくる半ぐれ社員」の扱いに頭を悩まされていることに気がつきました。
そこで、私はこう思いました。「これは、おかしい。」「何で、一生懸命、額に汗して会社のため、お客様のため、ひいては社員のために仕事をしている経営者がこのような目にあわなければならないのか?」です。
原因は、頭でっかちの専門家が現場を知らずに、マニュアルに書いてある内容を説明するだけで、本質的なアドバイスや助言ができていないからだと確信いたしました。
つきましては、「本気・本音」のイノキュウが「本物」のご提案をさせていただきます。もし、「そうだ。」「その通りだ。」と思われた経営者の方、イノキュウまでご連絡ください。
いっしょに闘いましょう。
「おまえは、くびだ。」は絶対に言ってはいけませんか?
そんなことは、ありません。
「おまえは、くびだ。」はやや、乱暴な物の言い方ですが、
言っていることは、⇒「あなたを解雇します。」です。
ですから、ただちに違法となる言動ではありません。
法に違反する場合は、無効になる可能性があるということです。
「おまえは、くびだ。」は法違反ですか?
根拠となる条文は、労働基準法29条と労働契約法16条です。
(労働契約法16条のみご案内申し上げます。)
労働契約法(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
確かに乱暴な言い方は控えるべきですが、経営者が有している解雇権は立派な権利です。
権利を行使することは、何ら問題はありません。
ただ、その権利の行使が、「権利を濫用」とみなされたり、「違法」となる場合に
①無効となったり、
②法違反による罰則・罰金が科せられるというだけの話です。
申し上げたいことは、まだ、何も決まっていないのに、あれこれ心配ばかりして、自己規制ばかりしていると、相手(「不良社員」「クレーマー社員」「因縁をつけてくる半ぐれ社員」)になめられ、いいように振り回されるということです。
さらに、もっと恐ろしいことは、真面目に一生懸命に働いてくれる大切な社員から、
「な~んだ、所詮、うちの社長は何もでないのか!」と愛想を尽かされてしまうことです。
では、どうしたらいいのでしょうか?
①就業規則の懲戒規定に、経営者ご自身が「こんな行為は絶対に許せない。」という事項をしっかり入れる。
(例)
・年長者に対し、反抗的な態度を示した場合
・年長者の助言・アドバイスを聞かず、同じ過ちを繰り返した場合
②就業規則および就業規則の懲戒規定について、
入社時および契約更新時等に経営者自身が丁寧に説明する。
③もし、許しがたい行為を社員が行った場合の対応は次の通りです。
1.まずは、その瞬間、すぐに注意をする。
2.注意した内容について、記録をとっておく。
3.口頭で注意しただけにしておかないで、後になってからでもいいので、
文書(改善勧告書)を渡す。
4.3の改善勧告書に対する改善誓約書をできる限り取得しておく。
2~4は、最悪、裁判になった際の証拠の確保です。
いかがでしょうか?
このような社員の対応に悩んでおられる経営者の方、ご遠慮なくイノキュウにご相談ください。ご相談は無料です。連絡、お待ちしております。
2024年9月9日(月)第6回掲載分
こんにちは「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久です。
おかげさまで、本コラムへの連載執筆も今回で7回目となります。
今まで、私が社労士・行政書士として、現場で体験してきた話をお伝えさせていただきましたが、そろそろ、そもそも、なぜ、私が社労士・行政書士なったのかについて、今回から3回にわたりますが、お伝えさせていただこうと思います。
1.絶頂からの転落
さて、お陰様で今こそ「何とかやれる」という、自信..のようなものが芽生えてきましたが、私が社労士・行政書士を目指すきっかけは、とても人にご披露できるようなものではありませんでした。しかし今日は、勇気を出して、正直にお伝えしようと思います。
それは、今から約16年前。私は、損害保険会社の神奈川支店長から、2008年4月1日付で、本社の自動車営業第一部長に栄転しました。当時はまだ、運転手付きの車や、数千万円の高級ゴルフクラブ会員権の付与など、給与外の待遇も非常によかった時代で、正に、人生の絶頂期にありました。おまけに、このポストに就いた社員は100%、執行役員に就任。その後は、取締役、常務、専務と昇格する社員も珍しくなく、ある意味で、「将来を約束されたのも同然」のポストだったのです。
周囲の社員や取引先からは、「井上大部長!」とか、「よっ、将来の社長!」とか、ありとあらゆる賛辞や煽ての言葉が降り注ぎました。自分自身も「これからが本当の勝負だ。目いっぱい、やってやろう。登れるところまで登って、社長になってやろう」と、燃えに燃えていました。
しかし、着任してわずか4日目、2008年4月4日金曜日が、運命の日となったのです。
前述の通り、社員からも持ち上げられた私は、すっかりいい気になっていたのでしょう。
4月4日の歓迎会の席はおおいに盛り上がりました。会の後半には、無謀にも若い社員との一気飲みにも応じ、不覚にも、すっかり酩酊してしまったのです。そして、あの“事件”を起こしました。
すべては私の至らなさが招いた結果です。女子社員の体に触るなどの、いわゆる「セクハラ行為」を行ってしまったのです(お恥ずかしいことに泥酔しすぎて記憶がありませんが、目撃者が多数おりました)。
4月14日、月曜日。担当役員から、自宅謹慎を命じられました。
「いずれ、人事部から連絡があると思うので、自宅でいつでも連絡がとれるようにしておいてください」自宅謹慎なので、当たり前ですが出社できず、勿論、外出も禁止で、自宅からも出られません。よって、普通なら会社員が出勤する月曜日から金曜日の日中、ず~っと、大の大人が家にいるのです。自宅には、妻がいます。当然隠しきれません。翌朝、正直に事情を話したところ、
「身から出たサビね。あなた、自分の娘がそんな目にあったら、殴り込みにいくでしょ。自分のしたことを胸に手をあてて、よく考えてみなさい。娘たちへの言い訳は、自分で考えなさい」
と言い渡されました。「本当にもう、いい加減にしてください」と、あきれ果てた溜め息と共に……。
社会人になりたての長女には本当のことを打ち分けると、
「お父さんの社会人としての仕事ぶりは認めるけど、人間としては全く、認めていないからね。だけど、自殺だけはしないでよ、お母さんが困るから」と言われ、返す言葉もありませんでした。
こうして自宅謹慎が始まりましたが、一向に人事部からの連絡は入りません。
「水曜日か木曜日ころに連絡があり、金曜日に会社に来いといわれ、厳重注意くらいで終わるのだろう」と、最初はそんな風に考えていました。なぜなら、自分は会社に多大な貢献をしてきたのだという自負があったからです。
しかし現実は全く、そんな甘いものではありませんでした。
連絡がないまま1週間が経過し、2週間目に入ったころから、「もしかしたら、想像より大事になっているのかもしれない」と危機感を覚え始めます。生まれて初めて会社の就業規則――懲戒事由の項――を真剣に確認しました。
相手の望まない性的言動により、他の者に不利益を与えたり、就業環境を害すると判断される行為等をした場合、懲戒処分に処す。懲戒の種類は以下の通りとする。「謹慎」「出勤停止」「降級」「論旨退職(論旨解雇)」「懲戒解雇」……。
懲戒解雇。ここでようやく、クビもありうるのだという現実を認識しました。
「……もしかしたら、懲戒解雇に向けての準備を周到にしているのではないか。そのための自宅待機?」
就業規則の確認後、人事からどんな話をされるのか、大体の想像がついた気がしました。
「井上さん、あなたが行った行為は懲戒解雇に該当します。しかし、あなたにも生活があり、将来がありますから、今ここで退職を申し出れば、『懲戒解雇』ではなく、退職金が100%支給される『論旨退職』とさせて頂きますが、どうされますか?」
こんな形で退職勧奨をされるのだろう、と(実際、その通りだったのです)。
(次号に続く)
2024年10月14日(月)第7回掲載分
こんにちは「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久です。
前回から、私が何故、社労士・行政書士になったのかについて、お伝えさせていただいておりますが、前回は、私が歓迎会でセクハラ行為をしてしまい、自宅謹慎を命じられたところまでをお伝えさせていただきました。
2.人事部からの呼び出し
4月の終わりに、ようやく人事部長から直接電話があり、「明日、出社してください。その際は必ず印鑑を持参してください」と指示されました。
この自宅謹慎の期間中は 、色々と考えました。毎朝、自宅の前を通って駅に向か う 、通 勤する人々の姿を見ては、
「あ~、普通に働けるってどれだけ幸せなことなのだろう」
「自分から会社の役職を取ったら、本当に何の価値もないただのおじさんだな」
「このまま世間に放り出されたら、月10万円も、いや、1円も稼げないのではないだろうか」等々。
人事部に出頭してどうするか、考えました。悩みに悩みました。
自分にとって、一番大事なのは何か。それは家族だ。妻と3人の娘だ。そして、娘2人はまだ大学生。娘たちが社会人になるまでは、どんなことにも耐えよう。家族を守るためなら、どんなことも受け入れよう。
「どんなに泥を被っても、家族を守るためなら、誰から、何を言われてもかまわない」
そう、決意を固めました。
人事部長は、かつて一緒に仕事をしたことがある一年後輩でした。
「井上さん、残念ですが、井上さんが行った行為は、懲戒解雇に該当します。しかし……」
予想通りの退職勧奨に、私は必死で食い下がりました。
「どんなことも受け入れますが、退職だけは勘弁してください。挽回のチャンスを頂きたい。降級でもなんでも受け入れますから」
「井上さん、本当に厳しいですよ。降級というのは、部長から副部長になるというようなレベルではありません。管理職でなくなり、平社員になるのですよ。自分の子供と同じくらいの歳の社員と同じ待遇になるということですよ」
それで構わない、とにかく会社に残してほしい、と懇願しました。
「……分かりました。できるかどうか分かりませんが、その線でやってみます。だけど、本当に厳しいですよ」こう釘を刺されつつ、人事部を後にしたのです。
3.猛勉強、開始
それから2週間後。一般社員への降級と共に、損害サービスセンターへの異動が発令。以後、賠償主任(人身事故の被害者の担当者)の仕事をすることが決まりました。
「あ~、井上さんも落ちるところまで落ちたな」「もう、終わりだな」
周囲はそんな風に思っていたでしょうが、私の認識は違いました。
「何とか首の皮一枚、繋がった。与えられた仕事を一
日も早くマスターして、日本一の賠償主任になってやる」
同時に、これからはとにかく自分を磨こうと考えていました。今回、なんとかクビは免れましたが、いつ何時、「価値のないおじさん」として世間に放り出されるか分かりません。そうならないために、誰が何と言おうと、自分の意志で収入を得られる職業に就こう。そ
れには資格の取得が不可欠だ。
こうして、損害サービスセンターに出社する 5月26日から、1日6時間の勉強を開始したのです。
往復の通勤電車の中で3時間(1.5時間×2)、出社前にハンバーガーショップで1時間、帰宅時に自宅最寄り駅のコーヒーショップで1時間、帰宅してから就寝するまでの間に1時間で、計6時間。
この時点で、「何としても行政書士になりたい」と思っていましたが、いきなりは無理だろうと、まずは、法律関係の試験の登竜門であるFPへの挑戦を決めました。そして、ユーキャンの通信講座で勉強開始です。
平日は勿論、休日に出かけるときも必ずテキストを持ち、家族が買い物をしている間、私はショッピングセンターのイートインスペースの片隅で、黙々と勉強。
「何でこんなことに……」とか、「あれさえなかったら今頃執行役員になっていただろう」とか、様々な悔しい気持ちが湧いてくるのですが、テキストに集中し、勉強している間だけはその悔しさから解放されました。ある意味では、勉強が精神安定剤だったのかもしれません。
(次回に続く)
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2024年12月9日(月)第9回掲載分
こんにちは「社労士・行政書士イノキュウ」の井上久です。
前々回から、私が何故、社労士・行政書士になったのかについて、お伝えさせていただきます。前々回は、私が歓迎会でセクハラ行為をしてしまい、自宅謹慎を命じられたこと、前回は、人事部長に命乞いをして、平社員への降格で会社に残り、猛勉強を開始したところまでをお伝えさせていただきました。
(3)行政書士・社労士試験に合格!
勉強している時だけ、悔しさ、虚しさ、寂しさから解放されるのですから、勉強がイヤだとかしんどいとか、辛いと思ったことはありません。
1日6時間・月180時間、年2,000時間超の勉強で、2008年の秋に FP(AFP)に合格。2009年1月からは宅建士(※受験時は宅建主任者)の勉強を開始、一発合格。いよいよ2010年1月から、行政書士の勉強開始です。
最初の1年は通信教育での挑戦でしたが、やはり、通信だけでは限界があります。翌年は教室講義を加えてみたものの、2年目・3年目も不合格。この時はさすがに、「これ以上、何を勉強すればいいんだ」という気持ちになりましたね。
2013年の年明けからは、最終到達点と考えていた社労士の勉強を開始しました。予想通り? 初年度は全く手も足も出ず不合格。しかし、社労士試験終了直後に、今度は行政書士試験のラストスパート。
この短期集中の取り組みが功を奏し、4回目にして、2013年11月、なんとか行政書士試験に合格しました。
社労士試験はその後3回、不合格になりましたが、「挑戦を続け、自己ベストを更新していれば、いずれ、いつかは合格できる」と信じて挑戦を続け、5回目、2017年8月に、奇跡的に合格できました。
(4)定年退職と同時に開業、そして、今後も目標
2021年4月1日に65歳の定年退職と同時に開業いたしました。
最初は、毎日が日曜日の物音ひとつしない超暇な軸を過ごしましたが、4ヵ月目頃から、
いろいろな仕事が入り出し、おかげさまで、今は、毎日、忙しくさせていただいております。
その中で、現在の私の仕事の中心は、2021年9月から、縁あって、その仕事をさせていただくことになりました「働き方改革推進支援センター」の仕事です。「働き方改革推進支援センター」とは、政府が2019年にスタートさせた「働き方改革」の推進に向けて全国47都道府県設置したセンターで、事業主様のさまざまなお悩みや課題の解決に、いろいろな方法でお応えする機能を有したセンターです。
現在、私は、「東京」、「神奈川」、「千葉」、「京都」の4センターで、電話相談対応と訪問コンサルタントの仕事をさせていただいており、1日に2社から3社、さらに多い時には4社、センターに支援要請をいただいた事業主様を訪問もしくはZoomミーティングで面談し、「悩んでいること」や「困っていること」を伺い、解決に向けたアドバイスを行っており、現在までに延べ1,250社(2024年8月末現在)を超える事業主様の様々な相談に接してまいりました。
事業主様からのご相談は、作り事ではない「本気・本音・本物」の相談ですので、正直、即答できるようなことはめったにありません。しかし、原則、当日、どんなに遅くとも翌日、朝一番までに返事をするようにしております。この事業主様からのご質問・ご相談は、新米社労士の私にとっては宝の山なのです。なぜなら、この「本気・本音・本物」のご相談・ご質問に対し、ひとつひとつ懸命に対応してきた結果、知らない間に、力がついていたというのが実際のところだからです。
この会社への訪問(Z00mによる面談を含む)活動により、着実に力がついたことを実感しておりますが、まだまだ、道半ばです。
私は満70才で迎える開業5年後の26年3月末までに3,000社訪問(Zoomによる面談を含む)を達成し、真にお客さまから信頼される万全の対応力を有した社労士・行政書士となり、2026年4月1日の開業6年目からが、真のスタートであると考えております。それまでは、毎日が、修行ですから、愚直に粘り強く、正直、損得は抜きにして、お客さま訪問を続けてまいります。これからも、よろしくお願い申し上げます。
2024年12月9日(月)第9回掲載分
2025年1月13日(月)掲載分 新米社労士イノキュウの現場からの本音の報告(10)
新日本保険新聞 寄稿原稿2025年1月分
① 「監督からいただいた最高のお褒めの言葉」
前回までの3回にわたり、私が社労士・行政書士になった経緯をご報告させていただきましたが、
今回から3回にわたり、私が社労士・行政書士事務所を開業して、本当によかった、嬉しかった出来事について、お伝えさせていただきます。
それは、もうすぐ開業2年目を迎えようとしていた2022年3月13日(日)の昼過ぎに、いきなりいただいた電話からはじまります。連絡をしてこられたのは、私の恩師であります慶応義塾大学体育会ソッカー部の元監督です。(以下、監督と呼ばせていただきます。)
監督は、私が慶応義塾大学体育会ソッカー部(慶應では、サッカー部ではなく、ソッカー部と呼びます。)の1年から3年まで3年間、ご指導いただいた方で、サッカー選手としては、日本サッカーの父といわれたデッドマルクラーマーさんをして「日本のフォクツ」と呼ばせた名選手であり、また、選手引退後は、三菱重工、三菱ふそう、等で、役員・社長を務められた文武両道の素晴らしい人物なのです。
また、監督の一番素晴らしい点は、誰にでも誠実にやさしく、そして、時には厳しく、平等に接する方で、実は私は、慶大ソッカー部に4年間在籍し、練習は1度も休んだことはありませんでしたが、
選手としては、二流・三流の選手で、公式戦出場は1度も無く、また、4年間で一度もベンチにも入れない選手でした。(ただし、3年の早慶戦だけは、15分間、出場させてもらいました。) そんな私にでさえ、いつも、優しく声をかけてくれるきめ細かな心配りのできる優しい器の大きな方なのです。
監督は、慶応大学体育会ソッカー部の監督を丸8年間務められたのですが、その時の多くの選手が
監督を慕い、「○○会」(○○は監督の名字ですが、実名の公表は控えさせていただきます。)という会(ほとんどは、飲み会ですが・・)を作り、毎年、2回くらい集まり、その出席者はいつも30人~40人くらいで、多い時は50人を超えることもあったと思います。
監督の説明が長くなってしまいましたが、そんな監督さんが、私の携帯に電話してきたのです。
私は、すぐに電話に出て、「ご無沙汰しておりまして、申し訳ございません。」「お世話になっております井上久です。」とご挨拶をさせていただきました。すると、いきなり、「お前、遺言書、作れるのか?」と聞いてくるのです。実は、監督は、すでに末期がんで、2年半くらい前から、自宅で闘病生活をしておられるという情報は入っておりましたので、私は、「遺言書」と聞いて、なんともいえない気持ちになりました。しかし、努めて明るく、「○○さん。私は行政書士ですから、遺言書くらいは作れますよ。」「しかし、何で、私に電話してくれたのですか?」と伺うと、「毎年、お前がカレンダー、送ってくれるやろ、わしの家にそのカレンダーが掛かっとるんよ。」「だから、電話したんや」とのこと、
わたしは、こう申し上げました「それでは、まず、お話を伺いたく存じますので、ご自宅に伺いいたします。一番、早く、伺える日は、3月17日(木)ですが、いかがでしょうか?」と申し上げますと、
「よし、わかった。待っているから、よろしく頼む。」と言って電話を切りました。
第1回目の訪問は、3月17日(木)14時00分といたしました。
私は、2008年11月に母を亡くし、その時の遺産相続関係の書類を保管しており、
また、2021年4月の開業前の2020年11月に受けた人間ドックで「膵臓がん」の疑いがあると言われ、(その後の検査で、膵臓がんではないことを確認できましたのでご安心ください(笑))心労で憔悴する妻のために真剣に財産目録と遺言書等を作りましたので、その時の書類を基に、監督に説明するための資料を大急ぎで懸命に作り、当日、ご自宅を訪問させていただきました。
(以下、次回に続く)
2025年1月13日(月)掲載分 新米社労士イノキュウの現場からの本音の報告(10)
2025年2月10日(月)第11回掲載
②「監督からいただいた最高のお褒めの言葉」(2025年2月掲載予定分)
ご自宅にうかがうと奥様がお迎えいただき、「井上さん、お忙しいのに申し訳ございません。」「○○の家内でございます。」とご挨拶いただきました。
実は、私は、大学3年生の夏合宿の帰りに監督をご自宅まで車で送り、その際、監督から「まあ、うちでビールくらい飲んでいけや」と言われ(運転手は別の選手でした・・・ご心配なく)、ずうずうしく、遠慮もせず、ご自宅で奥様の手料理の数々をいただいたことがあるものですから、約50年前のことをお話させていただくと奥様も「そうでしたかね~」「うちには、みなさん、お越ししいただきましたので」「そうでしたか」と嬉しそうにお迎えいただいたのです。
監督は、私が想像していたよりはるかにお元気で、足腰は弱っていたかもしれませんが、頭は極めて鮮明で、会話は昔のままです。
「実は、息子から、あとのことを決めておいてくれ。」と言われ、「自分もその通りだと思い、お前に電話したんや」「よろしく、頼む」「それから、ちゃんと費用は請求してくれよな」とこんな感じで話が始まりました。
その後、監督の病気の状況、今のお気持ち、等々、お話を伺い、その後、相続に関する基本的な説明をさせていただき、その中で、遺言書の位置づけと遺言書の種類についての説明を行政書士としてさせていただきました。
最後に、私の持論を次のように申し上げました。
「残念なことに、相続をめぐって、いままで、仲良くされていたご家族が仲たがいされ、中には、訴訟にまで発展するケースもございます。私はその一番の原因は「疑心暗鬼」だと思っています。」
「ですから、決して、強制はできませんが、遺言書を作成した後に、その内容をご本人の口から、直接、相続人の方にご説明いただくのがベストだと思っております。「秘密にしておく。」という考え方の方もおられますので、決して強制はできませんが、疑心暗鬼を起こさせない最善の手段は、正々堂々と被相続人様が自分の気持ちを相続人全員に述べられることだと思っています。」
このようなご説明をさせていただきましたところ、監督から
「わしも、そう、思うんよ。」「じゃ、どうしたらいいんや」と言われましたので、
まず最初に、「○○さん、誰のことが一番、心配ですか?」と伺うと
「そんなことは決まってるやろ、こいつに」と奥様のことが何よりも心配との意思表示をいただきましたので、「では、何かも全部、奥様に相続ということもできるのですよ。」と申し上げましたところ、
「そうか、だけど、息子と娘にも、少しは残してやらないとな。」というような会話が展開し、ご本人の最終的なご意思を確認できました。
もう、時間は、午後5時くらいになっていたでしょうか、
「では、次回までに、遺言書の原案と遺産分割協議書、財産目録等、必要な書類の原案を作ってまいります。少しだけ、お時間をください。今日は、たいへん、お忙しい中、誠にありがとうございました。」
とご挨拶をして、失礼させていただこうとすると、
「お前、めしぐらいくってけよ。」「わしも一杯飲みたいんや。」と言われ、
「えっ、飲みたいって、いいんですか?」と奥様の方を向いて申し上げると
「せっかく、来てくれたんだから、当たりまえやろ」とおっしゃり、奥様も
「言い出したら、聞きませんから、井上さん、お付き合いしてあげてください。」とおっしゃられるので
「承知いたしました。」と申し上げ、ご自宅の近くの和食レストランに行きました。
そこで、監督は、自分の身体がしんどいにもかかわらず、私に気をつかっていただき
「遠慮せずに食えよ。お前、飲めないんか」とおっしゃりながら、ご自身は日本酒を2合、お飲みになられました。
私は、「すみません。今日は、車で、来ていますので、お付き合いできませんが、ノンアルコールビールをいただきます。」「次回は、電車で参りますので、よろしくお願いします。」と申し上げました。
さらに、自分はおそらく、食事どころではないはずなのに、私に気を使わせてはいけないと思われたのでしょう、頑張って、無理して、召し上がるのです。さらに、私に気を使って、努めて明るく振舞われるのです。私は、何とも言えない気持ちになりましたが、このような場に居させていただける幸せを感じ、神様に心から感謝した次第です。
(以下、次号に続く)
2025年2月10日(月)新米社労士イノキュウの現場からの本年の報告(第11回分)
2025年3月10日(月)掲載分
③「監督からいただいた最高のお褒めの言葉」
4月7日(木)の13時30分に2回目の訪問をさせていただきました。前回の後、財産目録、遺言書、遺産分割協議書等、必要な書類の原案を郵送しておりましたので、打合せ自体は極めて順調に進み、「息子と娘に話をしたら、「それで、いいんじゃない。」という返事ももらったので、これでいこうと思う。」
「実際には、いろいろ、あると思うが、よろしくお願いします。」と監督と、奥様が頭を下げられるので、「恐縮です。」「少しでもお力になれれば、なによりも嬉しゅうございます。」「どうぞ、よろしくお願いいたします。」と打合せはあっという間に、終りました。
実は、前回(2022年3月17日(木))の訪問の後に、○○会(監督を慕うOBが監督を囲んで一杯やる会です)の多くの先輩から、「井上、久しぶりに○○会をやりたいんだが、監督の体調はどんな具合だ?」「○○会、出来るか」と聞かれたものですから、3月17日(木)の状況をご説明申し上げ、「ご自宅の近くの監督行きつけの和食レストランであれば、大丈夫だと思います。その場合、私が車で送り迎えさせていただくことを奥様に約束すれば、おそらく、奥様もご了解していただけると思います。」と説明したところ、「井上、それじゃ、監督と奥さんの了解、取ってもらえないか?」「日程は、任せるから」という指示をいただいておりましたので、○○会の話を切り出しましたところ、
「よし、わかった。」「お前に任せるから、よろしく、頼む。」と監督から言われ、奥様からも「井上さん、ご苦労おかけいたしますが、どうぞ、よろしくお願いいたします。」と言われ、5月4日(水)12時30分~の開催が決定いたしました。
そして、5月4日(水)に約3年ぶりの○○会が開催されたのです。監督の体調のことを考え、各学年、3人くらいまでという人数制限をいたしましたが、それでも最終的には総勢23名の会になりました。
この中でもびっくりしたのは、監督の人間性です。末期がんの闘病生活をしている人なのに
参加者一人一人に気をくばり、冗談を言って笑わせ、全員を楽しませるのです。私は、心底、「この人はすごい人だなあ」と思いました。
さらに、会の終盤に参加者一人一人がメッセージを述べるのですが、私のメッセージの後に
監督から「みんな、よく聞いてくれ。今、井上に世話になっとるんよ。」「本当に良くしてもらって助かっています。」このあと感動的な一生、忘れないお言葉をいただいたのです。
「井上は(サッカーはへただったけど)、仕事はできるぞ。」(「サッカーはへただった。」は、実際には監督の口からは発せられておりませんが、聞いている全員がそのように感じたと思います。)
私は、胸がじ~んとなり、「ありがとうございます。」「最高のお褒めのお言葉をいただき、感激しております。」と感謝の言葉を返させていただきました。
同時に、いろいろな試練があったけど、行政書士になって本当に良かったと思った瞬間でした。
その後は、12月に一度、お会いいたしましたが、ご自宅にうかがうこともなく、年が明け、とくにご連絡もいただかなかったので、どうされておられるのだろうと思っておりましたところ、
2023年6月12日(月)午前8時00分ご逝去の訃報が慶応義塾大学体育会ソッカー部からメールで入りました。
私は、奥様に連絡したい衝動に駆られましたが、混乱させてはいけないと自重いたしました。
すると、6月19日(月)に奥様から携帯に電話が入り、「井上さん、ご存じかもしれませんが○○が亡くなりました。」「本当に井上さんには、よくしていただいて、感謝いたしております。」「○○からも、何かあったら、井上さんに相談するようにと言われていますので、お電話させいただきました。」とのこと、私は、一度、お伺いしたい旨、お伝えし、ご子息とお嬢様を交えてお話ができる6月25日(日)にお伺いすることにいたしました。
6月25日(日)に奥様、ご子息様、お嬢様とお会いいたしましたが、相続については、監督が、直接、自分の意思を伝えており、何の問題も生じないことを確認し、実際の手続は税理士、司法書士にしてもらった方がいいことを説明し、その上で、何かあれば、いつでもご連絡いただくことを確認させていただきました。
最後に、奥様、ご子息様、お嬢様、さらには、ご子息様の奥様からも
「井上さん、本当にありがとうございました。」「また、これからも、よろしくお願いいたします。」との感謝のお言葉をいただき、改めて、行政書士になれた幸せと喜びを感じた次第です。
2025年3月10日(月)掲載分「新米社労士イノキュウの現場からの本音の報告」
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