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〈社会保障 改革の論点〉立ちはだかる壁

〈社会保障 改革の論点〉立ちはだかる壁

    矛盾はらむダブル改定「追加の国民負担なし」難路

 高齢化で膨れ上がる日本の社会保障費をどう抑制するか。年末に控えた6年に1度となる診療報酬と介護報酬の同時改定は国民負担のあり方を考え直す好機となる。目先の財源論に終始するだけでは現役世代の負担増は避けられない。 

武見厚労相も年末のダブル改定について「とんでもなく難しい」と嘆く(17日、厚労省)

「重要なのは社会保険料の負担をこれ以上増やさず、現役世代の手取りが安定的に上がっていくことだ」。経済同友会の新浪剛史代表幹事は14日の記者会見で大胆な改革を求めた。

 少子化財源絡む

診療報酬は引き上げを要求する医療・介護業界と支出を抑えたい財務省の対決構図で捉えがちだ。だが本を正せば保険料や税財源、患者の窓口負担を元手とする診療報酬は医療を巡る国民負担そのものといえる。

 足元で46兆円ほどの国民医療費が2040年度に70兆円台後半まで増えるとの推計がある。国民所得に占める税金と社会保険料をあわせた割合を指す「国民負担率」も22年度は47.5%。02年度は35%だった。

 負担を抑えるにはもとより高齢化で膨らむ社会保障費を固定費扱いせずに切り込むしかない。

 ダブル改定の行方は岸田文雄首相の肝煎りである少子化対策の財源とも絡む。

 政府は26年度ごろに国と地方であわせて年3兆円台半ばの追加予算の確保を見込む。一方で首相は「国民に実質的な追加負担を生じさせない」と繰り返す。

 財源の柱の一つになる「支援金制度」は医療保険料に上乗せして1兆円程度を捻出する想定だが、同規模で医療や介護の歳出削減をしない限り負担の増額分は相殺できず、首相も約束を果たせない。

 いまは物価上昇局面にあり業界は賃上げへ報酬増額を要求する。政権として賃上げの旗を振りながら医療・介護では歳出削減を進める――。「追加負担なし」というタガをはめられた議論は矛盾をはらむ。武見敬三厚生労働相は「とんでもなく難しい」と嘆く。 

割を食うのが医薬品業界だ。診療報酬は医療のサービスの対価にあたる本体部分と、医薬品や医療機器の公定価格を定める薬価部分に分かれる。近年は本体を上げる代わりに薬価をマイナス改定する「薬価頼みの医療費抑制」が定着した。 

続く薬価頼み

それもそろそろ限界に近い。海外の製薬企業にとって日本の薬価の安さは市場としての魅力をそぐ。

 海外の新薬が日本に入るのが遅れる「ドラッグラグ」。21年度の世界の医薬品売上高上位300製品の流通をみると米国に最初に入るのは65%で日本は6%にとどまる。海外の治療薬が日本市場で流れない「ドラッグロス」も起こりうる。

 介護報酬との兼ね合いも難題だ。政府は2日にまとめた経済対策で人手不足が深刻な介護職員の処遇改善を盛り込んだ。

 これまで介護報酬の改定率は診療報酬の本体部分の改定率を上回らせない不文律があった。集票力を持つ日本医師会の顔色を政治がうかがってきたからだ。改定率が逆転すれば日医の反発を招きかねない。16日の自民党厚労部会では議員から「診療報酬改定はプラスに」との声が相次いだ。

 日本の社会保障は世代間の負担の格差など議論すべき課題が山積する。業界への配慮という内向きの論理にかまける余裕はない。

  ▼診療報酬・介護報酬 診療報酬は医療機関や薬局が医療サービスの対価として受け取る報酬で、引き上げられれば医療機関や医師の収入の原資も増える。年間の医療費は診療報酬の総額とほぼ同じだ。

 介護報酬は介護保険サービスの料金体系にあたる。サービスごとの単価を上げれば事業者の収入が増え、運営費や職員の給与も手厚くできる。 

 

〈社会保障 改革の論点〉立ちはだかる壁

    氷河期世代にまた困難年 金改革、間に合わない

 バブル崩壊後の景気低迷で就職活動に苦戦し、非正規雇用を強いられた氷河期世代にもう一つの困難がささやかれ始めた。十分な年金がもらえず老後も貧困を強いられる事態だ。

 年金制度の次期改正について議論する年金部会(10月24日)

19932004年ごろに就職活動をしていた人たちは10年ほどで年金受給年齢にさしかかるが、非正規雇用では十分な報酬比例年金は受け取れない。年収200万円の単身者の場合、単純計算で受給額は月10万円に満たない。

 「ひとりじゃない。ひとつじゃない」。厚生労働省は10月から公開した動画で氷河期世代向けの就労支援策を紹介する。だが年金への言及はそこにはない。

 65歳を過ぎても

氷河期世代が直面する困難は年金改革が袋小路にさしかかったことを映す。

 かつて財政立て直しのために支給開始年齢の引き上げが模索された。本来なら団塊の世代への支給が始まる前に取り組むべきだったが、政治は不人気な政策を避け続けた。

 今から支給開始を遅らせれば、65歳を過ぎても年金をもらえない不利益は氷河期世代を直撃する。世代間の格差を広げかねず、もはや着手は難しくなった。

 「高齢期と年金制度の関わり」をテーマに10月24日に開いた社会保障審議会の年金部会。出席者から「非常に多くの現役世代が年金額が下がることに不安を持っている」との声が出た。

 25年には年金制度の次期改正を控える。議論する16項目の中に支給開始年齢の引き上げは含まれない。厚労省幹部は引き上げ論を「もはや過去の課題。完全に時機を逸した」と語る。

 海外では支給開始年齢の引き上げが進む。フランスは9月、国民の反発を受けながらも62歳から64歳への段階的な引き上げに着手。英国も現在の66歳から26~28年にかけて67歳にする。

 年金財政を維持する方策は限られる。支給額の抑制効果を期待された「マクロ経済スライド」。国の支出を少しずつ目減りさせるために、支給額を物価や賃金の伸びほどには増やさないようにする仕組みだ。

 しかし04年の制度改正で導入して以降、発動は4回しかない。年金の減りすぎを恐れた政府はデフレ下では発動しないとの原則を盾に実施しなかった。結果として高齢世代による年金の先食いが進んだ。

 将来世代に負担

抑制しきれなかった年金は将来世代が負担を迫られる「暗黙の債務」として積み上がる。法政大の小黒一正教授の試算によると、この見えない債務は19年の時点で1110兆円と国の長期債務残高に匹敵する。小黒氏は「足元では恐らくさらに膨らんだ」とみる。

 苦肉の策として基礎年金の保険料を支払う期間を現在の40年間から5年延長する案はある。働く年齢が延びた今の働き方にも沿う。

 問題は基礎年金の2分の1を国庫負担としているため、税負担が兆円単位で増えるおそれがある点だ。財務省は安定財源がなければ追加支出は認めない立場で政府内の調整は進まない。

 氷河期世代の年金受給開始まで残された時間は少ない。一橋大の小塩隆士教授は「年金改革が間に合わず、生活保護に流れる氷河期世代が大量に生じかねない」とみる。生活保護の財源は全額公費だ。財政はさらに重い負担を強いられる。

  ▼年金の支給開始年齢 国民年金は原則65歳からで60~75歳の間で選べる。厚生年金は当初55歳だったが1957年度以降、まずは男性、次いで女性の順に60歳への引き上げが始まり、2000年の法改正で65歳への引き上げを決めた。

 当時、保険料率の上昇を3%分ほど抑えられるとの試算があった。支給開始年齢の先延ばしで生涯でもらえる年金額は減るが、年金財政上は負担軽減につながる。

 〈社会保障 改革の論点〉立ちはだかる壁

    賃上げしても人材不足介 護職の賃金を見える化へ

 年々増える社会保障給付費のなかでも介護の伸びは目立つ。2021年度は11.2兆円と過去10年で1.4倍に増えた。25年には800万人の団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、介護の需要は急増する。制度の持続性は担い手を確保できるかにかかる。

 介護業界はいま慢性的な人手不足にあり、年末の介護報酬改定のテーマも介護職員の待遇改善だ。政府は支援を重ねてきたが、現場の働き手まで届きにくい構造に阻まれている。

 せいぜい1万円

「給料が大きく上がった実感はない」。介護福祉士として25年目を迎えた石川県の中村寿史さんはこう打ち明ける。

 政府は17年に「勤続10年以上の介護福祉士に月8万円相当の処遇改善をする」との方針を示した。中村さんは「上がったのはせいぜい1万円程度」と明かす。

 賃上げを実感できない一方で業務の負担は増す。入所者の高齢化で認知症や終末期の人は増え喀痰(かくたん)吸引といった医療的なケアも求められるようになった。

 中村さんが勤める施設にはおよそ240人が入所している。必要と見込む職員の数を常に10人ほど下回る体制で運営を続ける。離職者がいてもすぐに補充できず、負担は増すばかりだ。

 内閣府の高齢社会白書によると22年の介護分野の有効求人倍率は3.71倍だった。全職業平均の1.16倍を大きく上回る。

 岸田文雄首相は21年に「国が率先して公的価格を引き上げる」と表明。介護職などの給与を3%程度(月額9千円相当)引き上げた。厚生労働省によると申請した事業所は9割にのぼった。政府は11月の経済対策でさらに月6千円程度の上乗せを決めた。

 相次ぐ施策にもかかわらず、なぜ現場職員の実感につながらないのか。施設に支払ったカネが働き手に適正に分配されていないのではないか――。政府の疑念の矛先は事業所に向く。

 財務省は介護事業を運営する社会福祉法人の現預金や積立金が近年増加したと指摘する。17年度に2億9500万円だった1法人当たりの積立金が、21年度は3億2700万円に増えた。支援を拡充しても積立金に回っては意味がない。

そこで厚労省は24年度にも省令を改正し、各事業所の職員1人当たりの賃金データの公表に乗り出す。

 利用者が事業所選びで参考にする「介護サービス情報公表システム」に職員数や利用料、利用者数などとともに載せる。労働環境に配慮する経営者かどうかも伝わりやすくなる。

 競争力上げ期待

公平に可視化することで施設間で賃金の比較は容易になる。他産業との人材獲得競争に勝てる機運も出てくるとの期待もある。

 淑徳大の結城康博教授は「内部留保をできるほどの報酬を得ているのは医療法人の一部だ」と前置きしたうえで「経営者の努力で人件費の上昇につなげられる部分はある」と指摘する。

 介護保険が始まって20年ほどと介護業界の歴史はまだ浅い。訪問介護やデイサービス、特別養護老人ホームとサービスは多岐にわたり、行政の目配りも十分だったとは言い難い。

 これからますます切迫する財政。有効活用するためにも経営の透明化を不断に促していく必要がある。

  ▼介護職員の処遇改善 国が決める介護報酬改定や補助金が処遇改善の原資となる。賃上げに関する報酬の加算分は必ず賃上げに回すよう定められている。介護報酬や補助金は原則、それぞれの介護事業者に入る。各事業者の差配で職員に分配するため、職員1人当たりの賃上げ幅が必ずしも政府の目標通りになるとは限らない。

ユーチュブ動画のご案内

2023年11月23日(月)録画 

 〈社会保障 改革の論点〉立ちはだかる壁 31分21秒

ホームページ: http://www.inokyuu1125.jp/17006930410024

 

ユーチューブ動画: https://youtu.be/j6-pyslEdII

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