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「交際していた女性が2012年に語学留学するとき、女性が就職したら返済する約束で130万円を貸した。今も請求は可能だろうか」。都内に住む男性Aさん(38)は今年3月、法律事務所を訪れた。女性とは14年初めに破局している。Aさんは最近失業し、生活費が苦しくなったため返済を求めたいという。
お金を貸し借りした場合、貸した側には返済を請求する権利(債権)が生じる。注意したいのは債権は一定期間で消滅すること。貸し借りが20年4月の民法改正以降なら、原則として「権利行使できるときから10年」または「権利行使できることを知ったときから5年」の早い方となる。貸し借りが20年3月以前の場合は、改正前の「権利行使できるときから10年」が適用される。
貸し借りをする際は何月何日という返済日を定めるのが一般的。貸し手は返済期日に権利行使できることを知っているので、返済期日が「できるとき」と「知ったとき」になり、早い方の5年が時効だ。ただAさんのように「女性が就職したとき」と決めていたなら就職した時点が「できるとき」になり、就職したことをAさんが知った時点が「知ったとき」だ。
女性の就職は破局後の14年4月1日で、Aさんが知ったのは15年5月だった。期限が来るのが早いのは「知ったときから5年」の20年5月なので、すでに時効にみえる。しかし貸し借りは法改正前に発生しているため「できるときから10年」の対象になり、Aさんは24年3月まで請求することができる。
ただ時効になっても、借り手が「少しずつでも返します」などと借金があったことを認めたり、一部でも返済したりする「債務の承認」が発生すれば、「貸し手は再び全額を請求できる」(司法書士法人トリニティグループの新倉由大司法書士)。
小野総合法律事務所の庄司克也弁護士は「男女間では貸し借りではなく贈与だったとみなされることも多いため、借り手が借金だったことを認めた証拠を残すことが大切」と話す。メールや書類、電話の録音などで「返したのは借りたお金の一部です」といった内容があれば証拠に相当する可能性があるという。
お金の貸し借り以外にも様々な時効や期限がある。例えば交通事故や傷害、不倫といった不法行為の損害賠償や慰謝料の請求だ。時効は「不法行為のときから20年」または「損害および加害者を知ったときから3年(生命身体損害の場合は5年)」の早い方が適用される。
自動車の当て逃げ事故や見知らぬ相手からの傷害などでは「請求相手がわかるまで時間がかかることがあるため、不法行為のときからの期間は20年と長くなっている」(大空・山村法律事務所の大空裕康弁護士)。
住宅購入後に不具合が見つかった場合の修理や損害賠償請求の期限はどうか。新築住宅の「壁や柱など構造耐力上主要な部分等」の不具合や雨水の侵入などが発生している場合は請求の対象になる。期限は「社宅の品質確保の促進等に関する法律」で決まっており、引き渡しから10年だ。
売買契約の際に売り手と買い手が合意すれば20年まで延ばすことができる。「ただし買い主が瑕疵(かし)を知ってから1年以内に売り主に通知し、5年以内に権利行使することが必要」と新倉氏は指摘する。
賃金や残業代などで未払いがある場合は賃金請求権が発生する。期間は賃金の本来の支給日から起算し、「20年4月の法改正で従来の2年から5年に延びるとともに、当分の間は3年となった」(大空氏)。暫定措置を入れたのは早期の長期化に対する企業側の反対が大きかったため。数年内に本来の時効である5年とする法改正が検討されそうだ。
権利が消滅する時効とは逆に、他人の所有物でも一定期間占有すれば所有権などを得る「取得時効」がある。自分に所有権がないことを知っていても「所有の意思をもって」「平穏・公然」に20年占有すれば取得できる。自分に所有権があると考えていた場合は10年で時効取得となる。
例えば仲の良い友人に土地を貸して、友人が家を建てたとしよう。友人が土地はあくまで「借りたもの」と考えていれば「所有の意思」に当たらないので。時効は成立しない。しかし友人が亡くなり。子供など相続人が親の土地と信じて10年占有を続けると。取得時効の要件を満たす。
「親同士は仲がよく好意で貸していた場合でも、相続後はトラブルになりやすい」(新倉氏)。時効を避けるためには「貸したという契約書を残したり、賃料をもらい続けたりするほうがいい」と庄司氏は助言する。
都内に住む無職の男性Bさん(82)は所有地の一部を隣人にとられた苦い経験を持つ。土地売却の際に正確な境界を調べたところ、隣人が作った生け垣がBさんの土地に食い込んだ状態だったことがわかった。しかし生け垣設置から二十年がたち、食い込んだ部分は取得時効が成立していた。
隣地との境界が不明確な場合は早めに土地家屋調査士に調査を依頼し、不当に占有されていれば是正を促すことが重要だ。全国の土地家屋調査士会などで相談を受け付けている。東京土地家屋調査士会理事の松崎太郎氏は「正しい境界を知りたいという需要の高まりで、調査依頼は増加基調にある」と話している。
60万円以下なら少額訴訟も
時効や期限の知識があっても「裁判は長くかかるだけで煩わしい」と諦める人は多い。請求額が60万円以下なら簡易裁判所で比較的低コストでできる「少額訴訟」という制度を知っておこう。審理は原則1回で、判決も原則その審理が終わった直後に出る。相手の住所を把握していること、相手が少額訴訟に同意していることなどが条件だ。
手数料は訴えの額による。上限金額(60万円)の場合は6千円だ。訴状を自分で書くのは無理と思いがちだが「賃金」「売買代金」「敷金返還」「給料支払い」といった案件なら、簡易裁判所にひな型の用紙がある。裁判所のウエブサイトからダウンロードできる。相談窓口で書き方を教えてくれる簡裁も多い。弁護士をたてるのも可能だが。多くは本人が訴状を書いている。
少額訴訟では証拠書類や証人はすべて事前に準備する必要があり、請求の内容を1回の期日で立証できるかどうかが重要。「争いがそれほど複雑でなく、契約書などの証拠となる書類や証人をすぐに準備できるような場合に適している」と庄司氏は話す。判決結果に一度だけ異議申し立ては可能で、認められれば簡裁での訴訟として続行される。地方裁判所への訴訟は認められていない。(編集委員 田村正之)
日経マネーのまなび お金の時効、知って備える 13分 58秒
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