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揺れた天秤~法廷から~ 消火器殴打事件

揺れた天秤~法廷から~ 消火器殴打事件

「追い詰められていく感覚あった」

暴発はパワハラが原因か

 おまえのせいで―。ゲーム会社に勤めていた男(41)は、職場に置かれていた消火器を元上司の頭部めがけて振り下ろした。後になって動機を「パワハラを受けていた」と説明したが、会社も上司もそうは認めなかった。

 ハラスメントがあったのか否か。判断が難しいケースもあるなか、従業員からの相談に適切な対応を求められる会社側の苦悩も透ける。

 

凶行

 何が引き金になったのかは、本人にもわからない。2023年4月11日午前10時50分ごろ、東京都内の大手ゲーム会社のオフィス。男は勤務中におもむろに自席を立ち、近くに置いてあった消火器を手に取った。向かったのはかつての上司だった男性の席。振り上げた「凶器」で突然、頭を殴りつけた。

 男に当時の記憶は残っていないという。気が付いたときには会社の応接スペースで、駆けつけた警察官に取り囲まれていた。男は後に傷害罪に問われた公判で、防犯カメラの映像を見せられてようやく自分が何をしたのか認識できたと語った。  

 

 「おまえがいるせいでやりたいことができない」「自分だけが悪いんですか」。同僚に取り押さえられながら、そう叫んでいたとされる男。検察側は、最初は首を絞めようとLANケーブルを手に取ったが、周りに人がいたため「一撃」で攻撃できるものを探し、近くにあった消火器を左手でつかんで犯行に及んだとした。

 元上司は全治7日間の頭部打撲などのケガをした。男は逮捕され、即日会社を解雇された。凶行に及んだのはなぜか。男は元上司から受けた「パワハラ」が背景にあったと述べた。

 

認識にズレ、悩む企業 

 男は会社が運営する施設のアルバイトから契約社員を経て、11年ごろ正社員になった。入社直後から元上司の下で「プランナー」として勤務し、他社情報の収集や商品への顧客の反応を調べ、システムの整備などを担ったとされる。

 仕事を進めるには元上司の承認が必要だったが「話しかけると面倒くさそうな反応をされ、提案は基本的に通らなかった」机を並べる元上司に対し、憤りを募らせていった男。次第に頭痛などの症状が現れ、19年に職場でのストレスによる適応障害との診断を受けたという。人事担当者などに相談し、20年から元上司と別のチームに移った。 

 

直接の関りはなくなったが、男によれば、異動後の業務は元上司のチームが作ったコンテンツの商品化で、関係は完全には絶てなかった。新たなチームでも元上司の意見を聞く必要があり、自分が関わったことで提案が通らないなどして周りの信用も徐々に失い「追い詰められていく感覚があった」と主張した。

 会社の内部通報窓口に「非常につらい」「実力行使も辞さない覚悟」などと連絡。この4日後、男は事件を起こす。  

 

天職

 従業員の訴えがパワハラに該当するのか、対処に悩む企業は少なくない。

 厚生労働省はパワハラの定義を

①優越的な関係を背景とした言動

②業務上必要かつ相当な範囲を超える

③労働者の就業環境が害される―

の3要素を満たす行為とする。

 

 「過大な要求」など具体的な6類型も掲げるが、同省が21年に公表した調査で、約6300社のうち最多の65.5%がハラスメントの予防や解決の課題について、そもそも「ハラスメントかどうかの判断が難しい」と回答した。

  一方、社員側の調査で47.1%が、パワハラを受けていると知った後に会社が「特に何もしなかった」と答えた。「やった側」と「やられた側」の認識は必ずしも一致せず、対応を担う法務や人事、総務など管理部門の担当者は難しい判断を迫れらている。

 

「少しでも自分の立場や状況に目を向けてもらいたかった」。男は被告人質問で、犯行に及んだ際の思いをそう明かした。だが、会社側の認識とはずれがある。会社は男の主張について、取材に「これまで一貫して適切な対応を取ってきた」と回答。そもそも社内調査などの結果、パワハラの事実はなかったとの認識を示した。

 

 23年10月の東京地裁判決も、パワハラがあったと認定してはいない。その上で犯行について「それ以外の選択肢がなかったとは言い切れない」と指摘。重量のある消火器を用いた危険性などを踏まえ、罰金刑が相当とした弁護士側の主張を退け、男に懲役6月、執行猶予3年を言い渡し、確定した。 

 

無防備な職場で突然、重さ数キロの消火器で殴られる。一歩間違えば命に関わる危険にさらされた被害者の恐怖は計り知れない。判決の直前、元上司は男との間で示談に応じたが、それでも検察官に「処罰を望む」との意向を示した。

 

公判で「自分の好きなコンテンツに携われるのは幸せだった」と語った男。大好きな仕事なのにままならない日々にひとり悩みを深めていたのか。それとも恨みは一方的なものだったのか。近しい人に悩みを打ち明け、自信の状況を客観視できていれば「天職」との縁を失わずに済んだかもしれない。(嶋崎雄太)

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